本研究は、「要素」のヘテロ集積とそれらを有機的につなぐ「結合」の動的過程を緻密にコントロールすることにより、新しい超分子機能を構築することを目指した。以下に、各項目毎に今年度達成した主な研究成果をまとめる。 【多孔性超分子結晶中の動的過程の解明】大環状Pd(II)三核錯体が自己集合して形成されたナノチャネル結晶は、鏡像体関係にある5対のゲスト分子結合部位を持ち、数百種類の分子やイオンの位置選択的結合を明らかにした。この過程には、ゲストのチャネル内の拡散および吸脱着が含まれるが、今回、温度制御を駆使した単結晶X線構造解析により、分子が特定のポケットに結合するまでの過程をスナップショット観察することに世界で初めて成功した(Nat. Chem.に発表)。本成果は、分子配列過程のみならず、反応の設計や機構解明に大きく貢献することが期待される。 【回転運動制御が可能な分子機械の構築】平面4配位型白金イオン上にトリプチセン型回転子を二つ結合させ、光と熱の刺激によりシス型(噛み合い型)とトランス型(非噛み合い型)の可逆的に制御することに成功した(論文準備中)。また、ロジウム二核錯体上に四つのトリプチセン型回転子を環状に配列させ、分子内で噛み合ったギアシステムを合成した。両側のアキシャル位の配位子のタイプを立体的あるいは電子的に変えることにより、回転運動速度が著しく変化し、それに伴い錯体が示す色も劇的に変化した。このような分子運動速度と色が対応する分子システムの前例はない(論文準備中)。 【大環状金属錯体の分子捕捉能の可逆制御】Ag(I)二核中心を結合部位とする環状ホスト化合物を合成し、その二点分子認識能を明らかにした(JACSに発表)。ホストのアントラセン骨格の酸素分子付加機能を利用して、ゲスト分子の捕捉と放出過程を可逆的に制御することに成功した。
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