研究概要 |
今年度は交付申請書に記載したとおり、ひきつづいて異なる金属触媒を協働利用し、有機分子の中でも反応性に乏しい結合、例えば炭素-水素、炭素-炭素を活性化し、炭素-炭素不飽和結合への付加により新たな炭素-水素,炭素-炭素結合を形成する反応を研究した。結果を以下に記す。 アリールおよびビニルニトリル類について反応の適応範囲を検討し、一般性を確立した。このほかに、ニッケル/ボラン協働触煤によりポリフルオロベンゾニトリルの炭素-シアノ結合活性化し、アルキンに付加させることに成功した。ポリフルオロベンゾニトリルの場合、炭素-水素,炭素-フッ素結合も活性化されると十分に考えられるが、本触媒系では全く反応しない。以上の結果は、様々なアリール基およびビニル基、ポリフルオロアリール基を直截的に導入する実用的意義だけでなく、学術的にも価値がある。実際に見つけた反応を用いて、制ガン活性を有する天然化合物Rhazinilamの合成研究を進めている。 ピリジンの4位の炭素-水素結合をかさ高いルイス酸MADと配位子を組み合わせることにより選択的活性化し、アルケンへ付加させることに成功した。一般的にピリジンの2位が反応に用いられる場合が多いが、この場合協働触媒による立体的な要因、すなわち2位への触媒の接近を妨げることにより本反応を達成している。ホルムアミド類を用いた、カルボニル炭素-水素結合と分子内のアルキル炭素-水素結合を同時に活性化し、アルキンとの反応によるd-ラクタム類の合成反応を見つけた。 ここに示した二つの付加反応は、薬理活性物質および有機材料化合物の基本骨格の合成に有用であり、他分野との融合により研究のさらなる発展が期待できる。
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