研究概要 |
本研究は,微細加工された材料やデバイスそして生体細胞などの各部位へ近接場領域で光アクセス可能なマルチプローブヘッドを開発し,生成された励起子やキャリアの再結合によって生じるルミネッセンスなど,光ダイナミクスを測定するための基盤技術を開拓することを目的としている。平成21年度は,2ファイバー方式による近接場光学顕微鏡(D-SNOM)において,各ファイバーと試料表面間の距離や両ファイバー間の距離を独立して検出・制御する手法として2バンド変調法を開発し,装置の基本原理を特許出願した。また,緑色発光InGaN単一量子井戸において,イルミネーション(I)プローブによって光励起によって生成したキャリア・励起子が,異なる場所で発光していることを,コレクション(C)プローブによる分光測定により実証した。次に,光ファイバコアの径をいかに小さくできるか,また隣り合うファイバー間をどこまで接近させられるかについて,Maxwell方程式の有限差分時間領域(Finite Difference Time Domain : FDTD)計算による構造最適化を行うとともに,AuとAlの二段階蒸着と押し付けプロセスによって,表面が比較的平坦で耐剥離性に優れた微小開口作製プロセスを開拓した。さらに,短波長での分光技術の開発のために,チタンサファイア再生増幅装置と非線形光学システムを用いて,深紫外域短パルスレーザ装置を構築し,高品質AlリッチAlGaN/AlN量子井戸における,励起子の多体効果や電子正孔プラズマの輻射再結合ダイナミクスの測定に成功した。これらの成果は,速報として平成22年春季応用物理学会において報告した。
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