研究課題/領域番号 |
21226001
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川上 養一 京都大学, 工学研究科, 教授 (30214604)
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研究分担者 |
船戸 充 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70240827)
岡本 晃一 京都大学, 工学研究科, 特命准教授 (50467453)
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キーワード | 近接場光学 / マルチプローブ技術 / 光物性 / 半導体 / ナノ構造 / プラズモニクス / 光計測 / 走査プローブ顕微鏡 |
研究概要 |
光材料中のキャリア・励起子・プラズモンなどの素励起状態の時間空間ダイナミクスを可視化するために、一方のファイバープローブ(Iプローブ)で光励起を行い、もう一方のファイバー(Cプローブ)で光測定を行うデュアルプローブ近接場光学顕微鏡(Dual probe scanning near-field optical microscope : DSNOM)の開発を推進している。DSNOM測定において最も重要な技術は、ファイバー間の距離(d)と各ファイバーと試料の間の距離(h)を独立して制御することにある。そのため、両ファイバーに取り付けたチューニングフォークの共振周波数(32.7kHz)とは別に、Cプローブに周波数(100Hz)で変調振動を加え、両プローブに発生したシア・フォースを検出する手法(Dual band mdulation : DBM)を考案・実証した。このような発想は従来ないものであり、特許出願(特願2011-519892、PCT出願中)とともに装置の構成やファイバー構造・近接技術の詳細について、Review of Scientific Instrumentationにフルペーパーとして投稿中である。 さらに,Ag薄膜およびAg細線(幅3.4μm)における表面プラズモンポラリトン(Surface plasmon polariton : SPP)伝搬をDSNOMによって可視化した。薄膜の場合にはSPPが同心円状に広がって伝搬しているのに対し、細線の場合には,干渉縞が形成されており、伝搬距離が長くなっている。これは、細線端でSPPが反射し,もとの波と干渉したためだと考えられ、SPPの波としてのコヒーレンスが顕在化している例として興味深い(Applied Surface Science印刷中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2探針ファイバープローブタイプのマルチプローブ分光装置(DSNOM)は、光学シミュレーション(FDTD法)による光ファイバー構造の最適化やSynchronous-DBM法による2ファイバー間の精密距離制御など、種々の取り組みによって装置の完成度を高め、基本原理の特許出願、装置構成の論文化(投稿中)および企業への技術移転と製品化と、順調に開発が進展している。また、開発したDSNOM装置を用いて、励起子とプラズモンの空間移動の可視化を実現し、論文発表するなど、当初の目標に向けて順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
つぎの研究・開発目標は、(1)DSNOM装置に様々な機能を付加することと、(2)測定対象を拡大して装置としての有用性を高めていくことにあるが、順調に体制が整いつつある。 すなわち、(1)については、(a)表面プラズモン効果の応用と(b)近接場過渡レンズ法による非輻射再結合過程の可視化を中心に取り組みを進めて行く。
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