研究概要 |
近接場光学顕微鏡(SNOM)や共焦点顕微鏡によるフォトルミネッセンス(PL)マッピングにより,極性面上の緑色発光InGaN量子井戸(QW)の光物性を評価した。測定試料としては,(1)緑色レーザダイオード(LD)と同様の成長条件でGaNバルク基板上に作製したInGaN QWと(2)従来の成長条件でサファイア基板上に作製したInGaN QWである。PLピークエネルギーの励起エネルギー密度依存性や温度依存性の解析から,(1)の試料では,σ=20-25meVと,(2)の試料のσ値(約100meV)よりも大幅に抑えられていることが分かった。また,(1)では,数100nmスケールでの発光空間分布が均一化するとともに,波長分布幅2nm((2)の波長分布幅は20nm)と,大幅に抑えられていることが示された(Appl. Phys. Exp. 6, 111002 (2013).)。 また,極性面上への緑色LDの光利得スペクトルを,縦モード解析(ハッキ・パオリ法)によって評価した。その結果,内部ロスが10cm-1と従来の値の半分以下に低減しており低閾値化の大きな要因となっていること,光閉じ込め係数Γ=0.006と紫色~青色LD(Γ=0.016-0.03)と比較して大幅に小さく,微分モード利得が小さいことが,高出力化に不利な要因となっていることが明らかにされた。また,光利得のフィッティングの際に用いられた,ポテンシャル揺らぎの指標σgが,σg=95meVとσ=20-25meVと比較して大きく,PL弱励起によって評価された裾準位のポテンシャル揺らぎσと,高密度に注入されたキャリアが状態密度にある程度フィリングされた際に生じるポテンシャル揺らぎσgは異なっており,前者は局所的な局在を,後者はもう少し大きな空間階層で生じるポテンシャル揺らぎを,反映していることが定量的に示された(Appl. Phys. Exp. 6, 122704 (2013).)。
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