研究概要 |
本年度はまず、Cs光原子時計のオシレータとして用いる9.19GHz再生モード同期ファイバレーザにおいて、光周波数を制御する上で問題となるモードホップ(発振周波数の変動)の抑制に取り組んだ。まず、利得媒質であるエルビウム添加ファイバの高濃度化・短尺化により共振器長を5.5mまで短くすることで発振可能な縦モードの本数を制限するとともに、レーザ共振器内にFSRが9.19GHzのエタロンフィルタを挿入し、同時に発振可能な複数のスーパーモードから一つのモードを選択している。さらにエタロンの透過バンドのピーク周波数が常にレーザ周波数に一致するようエタロン素子を制御することにより、モードホップを完全に抑制することに成功した。今後は本レーザの光周波数をC_2H_2分子に安定化し、繰り返しと光周波数を同時安定化したCs光原子時計の実現を目指す。 また、C_2H_2周波数安定化CWファイバレーザを用いた高安定光パルス発生に関して、本年度はLN強度変調器で構成される光コム生成器により単一モードから複数本の平坦なサイドバンドを生成し、これを用いて繰り返し10GHzのコヒーレント光パルス(パルス幅6ps)の発生に成功した。さらに、光パルスの振幅と位相に同時に情報を乗せるQAM変調を本コヒーレント光パルスに適用し光時分割多重を導入することにより、400Gbit/s(10Gsymbol/s×4OTDM,32QAM,偏波多重)-225km伝送を実現し、本光パルスの有用性を明らかにした。本伝送技術は、近年光通信において高い注目を集めているコヒーレント光伝送システムの高速化に大きく貢献できるものと期待される。
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