研究概要 |
H25年度は、H24年度までに開発してきたモード同期パルスレーザの周波数・時間基準信号源としての性能を向上させるために、短パルス化に向けた改良を図った。さらに、H24年度に引き続き、直交振幅変調(QAM)方式と光時時間多重方式(OTDM)を用いたOTDM-QAMコヒーレント伝送への応用研究を推進した。 まずモード同期パルスレーザの改良に関しては、これまで採用してきたLN位相変調器を用いた能動モード同期技術に、可飽和吸収体を用いた受動モード同期技術を併用し、レーザの短パルス化を図った。可飽和吸収体としては半導体可飽和吸収体鏡(SESAM)を用いた。また、共振器内の光ファイバの分散ならびに非線形光学係数を考慮してソリトンレーザを最適設計することにより、これまで3.4 psであったパルス幅を0.44 psに大幅に短くすることに成功した。これにより周波数コムのスペクトル幅を約8倍に拡大することに成功した。 OTDM-QAMコヒーレント伝送への応用研究に関しては、広いパルス幅(狭い信号帯域)であっても符号間干渉を抑えることが可能な光ナイキストパルスを用いたコヒーレント光ナイキストOTDM伝送技術を新たに考案した。本伝送方式では、信号帯域の狭窄化により周波数利用効率が拡大し、また高速伝送において問題となる波長分散・偏波分散に対する耐力が向上することが特徴である。送信部においてCW周波数安定化レーザを基盤としたパルス光源と波形整形用光フィルタを用いてRaised Cosine形状の光ナイキストパルスを生成し、本パルスを用いて偏波多重160 Gbaud, 64 QAM(1.92 Tbit/s)信号の150 km伝送実験を行った。その結果、従来のガウス型光パルスを用いた場合に3.2 bit/s/Hzであった周波数利用効率を7.5 bit/s/Hzまで2倍以上に増大させることに成功した。
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