研究課題/領域番号 |
21226003
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河田 聡 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30144439)
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研究分担者 |
庄司 暁 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20437370)
熊本 康昭 独立行政法人理化学研究所, 基幹研究所, 研究員 (30611727)
田口 敦清 独立行政法人理化学研究所, 近接場ナノフォトニクス研究領域, 研究員 (70532109)
齊藤 結花 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90373307)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 走査プローブ顕微鏡 / 超精密計測 / プラズモニクス / 顕微イメージング / ラマン分光 |
研究概要 |
1 紫外プラズモニック構造の最適化と光触媒への応用 ナノ粒子リソグラフィー法を応用して、紫外プラズモニクスに最適なアルミニウムナノ構造体を作製した。さらに紫外プラズモニクス材料の候補であるインジウムについても、真空蒸着し基板との親和性を利用してナノ構造を作製することに成功した。作製したナノ構造の紫外可視吸収スペクトルを測定した結果、深紫外波長域に局在共鳴プラズモンに起因する吸収ピークが現れ、これらの構造体が紫外光と強くカップリングすることを示した。これらの紫外プラズモニクス材料を利用して、二酸化チタンによる光触媒効果を測定したところ、プラズモニクス効果によって有機物の分解速度が加速されることを見いだした。 2 紫外近接場光学顕微鏡プローブの改良 深紫外共鳴ラマン散乱によるナノイメージングを目的とし、紫外近接場ラマン顕微鏡の開発を行った。これまでの近接場プローブは散乱効率が悪く測定が困難であったため、石英ファイバーを材料として二層液体による化学エッチング法を改良してテーパー角度と数10nmの先端径を再現性良く形成する技術を確立した。プローブのテーパー角度は近接場光学顕微鏡の感度に大きく影響するので、今回このパラメータを制御したことで、近接場光学顕微鏡の性能を向上させることができた。 3 紫外ラマン分光による細胞および無機材料のイメージング 266 nmと355 nmの紫外―深紫外顕微ラマン分光イメージングシステムを構築し、細胞または強誘電体を材料に紫外共鳴ラマン分光画像を、サブミクロンの空間分解能で取得し、表層数十ナノメートルにおける試料の状態を配向観察することができた。細胞の顕微分光では、試料の劣化を低減するために低温セルを導入し、レーザー照射下の試料の経時変化を評価して、低温真空環境が紫外顕微イメージングに有効であることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
紫外プラズモニクス技術を用いて、光触媒効果の観察、紫外顕微イメージングの成果が得られている。また近接場光学顕微鏡用プローブの改良、試料の劣化問題の解決等、測定システムの改良もすすんでおり、順調な研究経過と言える。
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今後の研究の推進方策 |
金属微細構造による感光フィルムは紫外域に感度を持つために、光電子変換デバイスのなどの光増強作用を増幅するのに理想的な働きをすることが期待される。本研究で作製した紫外プラズモニクス感光フィルムは、二酸化チタンの光触媒効果を促進することが示された。この成果を今後プラズモニクス殺菌、または太陽電池の感光部等に応用することを検討する。さらに、プラズモニクスによる光局在を利用して非線形光学効果を誘起することができれば、新たな波長変換素子を作製することができる。紫外プラズモニクス材料であるアルミニウムについて、可視域での第二高調波発生が既に報告されている。本研究で開発したプラズモニック構造作製技術と組み合わせることで、高効率な紫外ナノ光源を形成できる可能性がある。局在化した紫外光光源は、近接場ナノイメージングや微細加工にも有効であるため、今後重点的に紫外プラズモニクスの非線形効果を探索する予定である。 紫外プラズモニクスは広い応用を見込むことのできる分野である。現在我々が取り組んでいる光触媒や顕微イメージングのみならず太陽電池、センサー、殺菌、紫外光源等に利用できる可能性がある。このような紫外プラズモニクスの可能性を広げるために、本年度秋にシンポジウムを開催することを計画している。(詳細は以下のHPに示す。http://optsun2.riken.go.jp/upn2013/index.html)国内外から多くの参加者を募り、紫外プラズモニクスの可能性について検討し、新たな市場と研究分野の開拓および我々のチームのイニシアチブを発信する。
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