研究課題/領域番号 |
21226005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北村 隆行 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20169882)
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研究分担者 |
澄川 貴志 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80403989)
嶋田 隆広 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20534259)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | ナノ界面 / 疲労 / 破壊 / 損傷 / 転位 / 界面端 / ナノ材料 / ナノメカニクス |
研究概要 |
機械構造物は、静的破壊荷重よりも小さい繰り返し荷重で破壊する疲労が大きな問題となっている。しかし、バルク金属材料の疲労破壊の原因となる疲労転位構造のスケールは数ミクロンオーダーであり、それよりも小さいナノ構造体の内部にこの転位構造が形成されることは不可能である。本研究では、ナノ構造体中の異材界面近傍での疲労損傷・破壊現象を実験・力学解析によって明らかにすることを目的としている。今年度の成果は以下のようにまとめることができる。(1)共振を利用してナノ構造体試験片に両振り高サイクル繰り返し荷重を負荷する試験法を開発した。また、共振周波数の変化より損傷の発生を検知できることを見出した。(2)結晶方位を制御したAu単結晶のナノ構造体試験片を作製し、(1)の方法によって高サイクル疲労試験を行った。マクロ材料の疲労で観察されるミクロンサイズよりはるかに微細な10-20nmスケールの入り込み突き出しが、主すべり面に沿って形成されることを発見した。これは、世界初の観察例である。(3)Si/少数結晶のCu/Si3N4のナノ構造体を作製し、Cu中の粒界形状と結晶方位を特定した。高サイクル疲労によって特定結晶粒に(2)と類似した微細な入り込み突き出しが発生し、その形成は微視的応力場によって支配されていることを発見した。さらに、それと界面の会合部より亀裂が形成されることを見出した。また、マクロ材料とは異なり、入り込み突き出し形成が負荷応力範囲に依存することを明らかにした。(4)SiおよびCuナノ亀裂体に関する大規模原子シミュレーションを行い、亀裂先端近傍の応力集中領域内の場を解析した。ナノ構造体においては、マクロ材とは異なる応力場が存在することを解明した。(5)ナノスケールの離散転位動力学シミュレーションを行った。ナノ薄膜ではマクロ材の疲労下部組織が形成されにくいことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度まで、当初の計画通りに進展してきた。その中間評価において、「A.初期目標に向けて順調に研究が進展しており、期待どおりの成果が見込まれる」との結果をいただいている。この成果を基に、平成24年度は当初計画に従って、(1)結晶数が限定的 な試験片の界面・粒界近傍の疲労による損傷・破壊に関する実験観察、(2)ナノき裂体の大規模原子シミュレーション、(3)ナノスケール原子シミュレーション、の3項目を重点的に実施し、各々について順調に成果をあげている。したがって、当初の計画どおりに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで順調に研究が進展しているため、平成25年度(最終年度)も当初計画に沿って研究を進める予定である。当初計画は以下の4項目である。(1)追加実験および追加解析、(2)ナノ界面疲労機構及び環境の影響についての総合検討、(3)電子・光デバイスやMEMS/NEMSの信頼性を高めるために、本プロジェクトの成果の設計・保守への適用についての検討、(4)バルク材料の実験より、高温下ではクリープ等によって界面が強度に大きな影響を及ぼすことが知られている。したがって、ナノ界面の疲労現象も温度の影響を顕著に受けると考えられる。本研究の将来発展を考えて、試験装置・方法および解析方法の高温環境への拡張を図る。
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