研究課題/領域番号 |
21226007
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 研 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70108471)
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研究分担者 |
角田 匡清 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (80250702)
小川 智之 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (50372305)
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キーワード | 窒化鉄 / 飽和磁化 / ナノ粒子 / 薄膜 |
研究概要 |
α"-Fe_<16>N_2相の窒化鉄は1972年に薄膜形態としてその存在が提唱さていたものの、窒化鉄の粉末として単相かつ高い再現性で得ることはできなかった。また、従来合成法では不純物や混合物を多く含んでいたため飽和磁化などの実験データの信頼性に乏しかった。本研究では、最適な原材料を合成し、それを用いてほぼα"-Fe_<16>N_2単相の窒化鉄ナノ粒子が得られる前駆体の合成技術を構築した。結果として、グラムオーダーでの高い合成再現性を確認している。X線を用いた結晶構造解析から、窒素原子が歪んだ鉄の結晶構造中で秩序を持って配列していることを意味する超格子回折が多数観察されており、合成した窒化鉄ナノ粒子はα"型の結晶構造であることを確認した。また、詳細な磁気測定から、飽和磁化値は50Kにおいて230emu/g、室温においても221emu/gを示し、薄膜形態の値(240emu/g)と同程度となっている。また、従来のバルク形態の純鉄の飽和磁化値220emu/g(50K)および218emu/g(室温)を上回ることからも、その高い生成率を確認できる。 一方、粒径を3.5nmから22nmまで系統的に変化させた純鉄ナノ粒子の3次元自己組織化集合体において、それらの磁気共鳴周波数、ならびに、有効異方性磁界との関係を詳細に検討した。その結果、磁気共鳴周波数が極小となる粒径(8nm)が存在し、この粒径を境界として小粒径領域と大粒径領域において、磁気共鳴周波数を決定する異方性磁界が、それぞれ、熱磁界と磁気双極子相互作用磁界で説明可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
独自に構築した間接合成法を適用することで、当初計画より早い段階でα"-Fe_<16>N_2単相ナノ粒子を高い再現性で得ることに成功し、極限磁性獲得に向けてブレークスルーとなる大きな一歩を踏み出すことができた。また、純鉄ナノ粒子集合体では、化学的に合成した均一粒径かつ単分散の純鉄ナノ粒子に特徴的な集合体プロセスの提案とその実験的実証にいくつかの例で成功している。構築した集合体プロセス技術を、今後、窒化鉄ナノ粒子に対し速やかに適用することが可能となり、工学応用展開も期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
窒化鉄ナノ粒子の合成については、間接合成法を適用することでα"-Fe_<16>N_2単相ナノ粒子を得ることに成功している。今後、間接合成法を中心とした試料作製に特化し、α"-Fe_<16>N_2相に存在する3つのFeサイトそれぞれの飽和磁化(磁気モーメント)や磁気構造を中心とした磁気物性の把握とその物理的描像の深化を図る。また、間接合成法で得られた窒化鉄ナノ粒子を用いて、凝集/分散の集合体形成技術の構築、ならびに、純鉄ナノ粒子集合体との比較を通して、粒子間で働く磁気双極子相互作用、直接交換相互作用が透磁率や保磁力等の磁気特性に及ぼす影響を検討する。さらに、窒化鉄薄膜と窒化鉄ナノ粒子の両者の構造および磁気特性の比較を通して、極限磁性につながる材料指針の獲得を目指す。
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