窒化鉄ナノ粒子の凝集・分散状態と磁気特性との相関把握のため、磁気トルク法を用いた回転ヒステリシス損失解析を行った。その結果、回転ヒステリシス損失が粒子の凝集・分散状態に敏感であり、現状の窒化鉄ナノ粒子分散集合体において個々の粒子が必ずしも完全に磁気的に孤立した状態にはなっていないことが明らかとなった。今後、分散プロセス、ならびに、集合体プロセスの最適化によって個々の窒化鉄ナノ粒子が完全に分散した磁気的孤立化の実現が期待される。 窒化鉄相の高熱耐性化を念頭に、Feとの二元相図において高温領域までbcc固溶体を形成可能なCrに着目し、超高真空スパッタ法を用いてα’-(Fe-Cr)-N薄膜を作製し、その磁化の温度依存性を詳細に調べた。その結果、CrでFeサイトを10at%以上置換した試料では、α’相からbcc-Fe-Cr相およびγ’-(Fe-Cr)4N相への相分離を示す温度は400℃以上となっており、Cr置換しない場合に比べ2倍以上高温化していることが分り、窒化鉄相の高熱耐性化に成功した。 高充填磁性ナノ粒子における粒子配列効果と磁気特性との相関を調べるため、平均粒径20nmのFe-Co合金ナノ粒子を適量のスチレンモノマーと混合し、50kOeの外部磁場中でポリマー化させた。電子顕微鏡の断面観察から、Fe-Co合金ナノ粒子が最密に配列している隙間に幅20-30nmで長さ数マイクロメートルのポリスチレン部分が形成され、その長さ方向が外部磁場方向であるようなナノ組織が観測された。このようなナノ組織は一軸的な磁化過程を示し、3.8x10^5erg/ccの一軸磁気異方性エネルギーを有していることが分かった。以上より、ナノ組織は集合体プロセス中に印加する外部磁場に敏感であり、今後、窒化鉄ナノ粒子集合体の磁気特性を議論する際には、結晶軸配向による一軸磁気異方性の向上とナノ組織を分離して評価する必要があることが分かった。
|