研究課題/領域番号 |
21226008
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木本 恒暢 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80225078)
|
研究分担者 |
須田 淳 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00293887)
西 佑介 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10512759)
|
研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
|
キーワード | 炭化珪素 / パワーデバイス / キャリア寿命 / 絶縁破壊 / 深い準位 |
研究概要 |
1) SiC PiNダイオードの超高耐圧化:高純度厚膜SiC結晶の作製と独自の電界集中緩和構造の適用、表面保護膜の最適化などを通じて、21kV耐圧のSiC PiNダイオードを実現した。シミュレーションで求めた耐圧と実測耐圧に見られる差異の主要因が、絶縁膜/SiC界面の固定電荷であることを明らかにした。この固定電荷の影響を受けにくい新たな接合終端構造を考案することで、温度の上昇と共に耐圧が増大し、かつアバランシェ耐量の高いダイオードを作製することに成功した。 2) 超高耐圧SiC PiNダイオードの順方向特性の改善:本研究で確立したC原子の拡散を利用したキャリア寿命増大プロセスを適用し、i層に注入されたキャリアの拡散長を増加させることにより、20kV級ダイオードにおいて順方向のオン電圧、オン抵抗を大幅に低減できることを明らかにした。高温動作も実証し、300℃において15mΩcm2という低いオン抵抗を達成した(SiCユニポーラ限界の約1/50までの低減を達成)。キャリア寿命増大を行わない従来プロセスで作製したダイオードでは、300℃でのオン抵抗は70mΩcm2以上であり、本プロセスの有効性を実素子で示すことができた。 3) 超高耐圧SiCバイポーラトランジスタの設計と作製:コレクタ領域に高純度SiC厚膜(180ミクロン)を用い、上述の電界集中緩和構造や適切な表面保護膜を用いることにより、耐圧21kV以上、電流利得60以上のnpn型SiCバイポーラトランジスタを実現した。ガンメルプロットにおいて、コレクタ電流は理想因子n=1で立ち上がっており、理想的な拡散電流が支配的であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自のC原子拡散プロセスを用いた深い準位の低減とキャリア寿命の増大(最高のキャリア寿命を達成)、PLイメージン法を用いたSiCエピ成長層および基板の拡張欠陥の詳細評価、高純度SiC厚膜と独自の接合終端構造を用いた最高耐圧(21kV以上)のSiC PiNダイオードの実現、最高耐圧(21kV以上)および高い電流利得(60以上)を有するSiCバイポーラトランジスタの実現など、研究は概ね順調に進行していると考えられる。当初の研究計画に比べて遅れは生じていない。
|
今後の研究の推進方策 |
超高耐圧SiCデバイス(ダイオード、トランジスタ)の設計と作製については、極めて順調であり、当初の計画を前倒しできている。今後はデバイス構造やプロセスの改良により、さらにオン特性(オン抵抗、オン電圧)の向上を目指す。p型SiCに対するオーム性電極の接触抵抗の低減や、p型SiC内のキャリア寿命増大が重要な課題であると考えている。 SiC材料研究についても順調であるが、重要な課題が残っている。SiC結晶中の主要な深い準位の起源解明に向けて、様々なドーピング密度と欠陥密度を有するSiC自立膜を作製する。こららの試料の電気的性質(キャリア密度、深い準位密度など)とEPR測定における点欠陥由来のスピン密度を対照させることで、深い準位の起源を解明する(現在、目処がついてきている)。また、p型SiCでは、n型ほど長いキャリア寿命が容易に得られないことが分かったので、この原因を解明して、p型SiCにおいて長いキャリア寿命を達成するための指針を提示する。
|