研究課題/領域番号 |
21226010
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
浅田 雅洋 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (30167887)
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研究分担者 |
宮本 恭幸 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (40209953)
西山 伸彦 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (80447531)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 大容量無線通信 / テラヘルツ発振デバイス / 共鳴トンネルダイオード / 集積スロットアンテナ / 室温テラヘルツ発振 / 直接変調 |
研究概要 |
大容量テラヘルツ無線通信のキーデバイス開拓を目的とし、今年度は以下の成果を得た。 共鳴トンネルダイオード(RTD)発振器の高周波化について、共鳴トンネル時間を短縮する狭井戸構造を作製し、昨年度、半導体デバイスが発生できなかったギャップ周波数を埋める1.3THzの室温基本波発振に成功したが、バイアス電圧が高いという問題があった。これに対して量子井戸を深くすることにより低バイアスでほぼ同じ周波数の発振を達成した。この結果とコレクタ層最適化による走行時間短縮を併用すれば、2THz程度の発振が可能なことを理論的に示した。高出力化では、オフセットアンテナ2素子アレイにより、0.62THzで0.61mWと、この周波数帯の単体デバイスとして最高の出力を得た。また、光軸調整が必要なシリコン半球レンズを用いない高指向性をもつ発振器構造の考案・設計を行うとともに、昨年達成したRTDの560GHz無線伝送において、出力および伝送距離と伝送容量の関係を実験的に明らかにした。 外部変調器について、前年度から検討している光生成キャリアを利用した変調器の詳細な設計を行い、高さ1µm程度にしたTHz導波路に変調器を組み込むことで、光とTHz波のスポットの重なりを大きくし、10mW以下の光入力で10Gbit/sの信号速度、10dB以上の消光比を持つTHz信号が生成可能であることを明らかにした。 変調器駆動用高速トランジスタでは、THz発振デバイスと電子デバイスで必要な成膜条件が異なることから、異種基板上に貼り合わせたInGaAs MOSFETの開発を行った。Si基板上にBCB薄膜を介して貼り合わせた10nm厚InGaAsチャネルMOSFETにおいて、ドレイン電圧0.5Vで 最大ドレイン電流2.04A/mm,伝達コンダクタンス1.4S/mmを達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
素子の高周波化について、狭くてかつ深い量子井戸構造の導入による低バイアス電圧による高周波発振の達成、また、高出力化について、オフセットアレイによる高出力化の達成など、テラヘルツ大容量通信に必要な素子の高性能化を順調に進めることができたことから、上記達成度とした。 また、今年度の研究進捗評価では、A評価(当初目標に向けて順調に研究が進展しており、期待通りの成果が見込まれる)をいただいている。
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今後の研究の推進方策 |
RTD発振器の高周波化・高出力について、当初考案した構造を用いて理論とほぼ一致する実験結果を得たことから、半導体電子デバイスの発振周波数および出力の更新が達成できており、引き続き、素子構造最適化により高性能化を進める。 高周波化に伴ってバイアス電圧が上昇し、破壊電界の限界に近づくため、深い量子井戸とともに階段型エミッタなど新たな構造を導入して、さらなる高周波化を図る。 RTDの直接変調について、変調信号入力に対する寄生素子を抑圧できる素子構造を作製し、より高速の伝送実験を行うことにより、テラヘルツ帯のもつ高速伝送応用の有用性を明らかにする。
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