研究課題/領域番号 |
21227001
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
島崎 研一郎 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (00124347)
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研究分担者 |
木下 俊則 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50271101)
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キーワード | 気孔 / 光情報伝達 / フォトトロピン / 細胞膜H^+-ATPase / イオン輸送 |
研究概要 |
昨年、青色光特異的な気孔開口変異株のスクリーニング法を確立した。この方法により、多数の変異体が単離され、最終的に気孔を直接測定する3次スクリーニングを経たものを複数取得した。この中でBLUS1 (Blue light signaling1)と名付けた興味深い株について記す。この変異体はサーモグラフィーによると、青色光によりほんのわずか葉温が上昇し、葉温の低下する野生型と大きく異なった。また、青色光依存の気孔開口が完全に消失していた。孔辺細胞プロトプラストの青色光によるH^+放出は完全に阻害され、その一方、フジコッキンによるH^+放出は阻害されず、この結果と一致して細胞膜H^+-ATPaseの活性は影響を受けなかった。青色光によるH^+-ATPaseの活性化は完全に消失していた。一方、フォトトロピンの自己リン酸化は正常であった。これらの事実はblus1変異がフォトトほピンと細胞膜H^+-ATPaseの間に特異的に起こっている事を示す。MaP-basedクローニングにより、この原因遺伝子として、これまで機能不明であった新奇のプロテインキナーゼを同定した。この遺伝子は変異体の表現型を相補した。このBLUS1タンパク質が青色光情報伝達系のかなり上流(下に示すフォスファターゼの上流)に位置する間接的証拠を得ており、現在、詳細を調べていう。 一方、タイプ1プロテインフォスファターゼ(触媒サブユニット)がフォトトロピンと細胞膜H^+-ATPaseの情報伝達を仲介する事をすでに報告した。このフォスファターゼは触媒サブユニットと調節サブユニットからなる。この調節サブユニット(PRSL1 : phosphatase regulatory subunit)を触媒サブユニットと相互作用するタンパク質として単離し、機能を調べた。このサブユニットの変異体は気孔開口が阻害されており、その表現型はPRSL1遺伝子導入によって相補され、調飾サブユニットとして機能することが証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概要には記載出来なかったが、blus1以外にも青色光依存の気孔開口が阻害された変異株が得られ、解析が進んで来た。また、当初計画には無かった新たな質量分析手法の導入により、研究の進展遠度が増している。加えて、この青色光情報伝達系の下流でアブシジン酸情報伝達系との相互作用を示す予想外の結果も得られた。本年度は、多くの面で格段の進展が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
上記スクリーニングで得られた変異体の解析をスピードを挙げて進める。また、blus1変異体は青色ヒ光依存の気孔開口が特異的に阻害されており、これを用いて、青色光依存の気孔開口の生理的意義、進化的意義の両面から研究を進める。
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