研究課題/領域番号 |
21227001
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
島崎 研一郎 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00124347)
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研究分担者 |
木下 俊則 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50271101)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | 気孔 / 光情報伝達 / フォトトロピン / 細胞膜H+-ATPase / イオン輸送 |
研究概要 |
昨年度に発見しBLUS1と名付けた新規キナーゼはフォトトロピンと細胞膜H+-ATPaseの情報伝達を仲介する、正に制御する新規因子であった。BLUS1は55kDaの分子質量を有し、そのN-末にキナーゼドメインをC-末に制御ドメインを有し、青色光によってC-末のSer-348がリン酸化された。このリン酸化は下流への情報伝達に必須でSer-348をAlaに置換するとシグナルが流れなくなった。このリン酸化は素早く起こり、細胞膜H+-ATPaseよりずっと早く、フォトトロピンの自己リン酸化の時間変化に近かった。この事実は、BLUS1がフォトトロピンにより直接リン酸化される可能性を示している。そこで、フォトトロピンの免疫沈降を行うとBLUS1が共沈してきた。さらに、試験管内でBLUS1はphot1と物理的に相互作用をした。In vitroにおいても同様にphot1はBLUS1のSer-348をリン酸化した。さらに、phot2によってもBLUS1はリン酸化された。以上の結果は、BLUS1がフォトトロピンの直接の基質であることを示している。この結果は、フォトトロピンの細胞内の基質を初めて同定したものである。 さらに、blus1変異体は気孔の青色光依存の開口を完全に欠いており、その生理学的役割を調べるに理想的な株であった。そこで、様々な環境条件で気孔開口の測定を行った。低いCO2濃度にしたとき野生株の気孔はその青色光応答によって大きく増加し、低CO2濃度でも高い光合成を保った。しかし、blus1は低CO2濃度にわずかしか応答せず、光合成による炭酸固定は大きく阻害された。この結果は、気孔の青色光応答は低CO2環境に対する適応反応と推察された。その他、気孔の青色光応答に変異のあるラインを見出しており、現在、解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した、気孔の青色光情報伝達に関与するシグナル因子が、複数個見つかっており、その中には、上記に記したこれまで機能が全く不明であった新規のキナーゼが含まれていた。さらに、このキナーゼがこれまで長年にわたって同定出来なかったフォトトロピンの基質である可能性が高い。この他にも複数の変異株を取得しており、現在、詳しく解析している。研究が進めばさらに新たな因子が見つかる可能性が高く、研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
以下の点を明らかにしたいと考えている。(1)まず、BLUS1がフォトトロピンの直接の基質であるかどうか、出来うる限りの手段を尽くして検証する。特に、フォトトロピンキナーゼの自己リン酸化部位の役割に注目し、その変異株を作出し、検証に役立てる。 (2)BLUS1中のSer-348のリン酸化の生理学的意味について調べる。現在、BLUS1を大腸菌等に発現させて、その活性をしらべている。しかし、人口の基質では活性がでないので何らかの工夫が必要である。 (3)BLUS1の基質の探索の方途としてtwo-hybridスクリーニングを利用し、相互作用するタンパク質を同定する。また、得られたタンパク質の変異株を入手し、その機能を調べる。 (4)blus1変異体以外の気孔開口変異体の原因遺伝子を同定する。同定された遺伝子の変異株を入手するか、あるいは、変異体を作出し機能解析を行う。 (5)blus1変異株のCO2、光質、生長等を詳細に調べ、野生株と比較する事によりその生理学的役割を解明する。
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