研究課題
平成25年度は、本研究でこれまでおこなってきた全ての種分化研究および大進化研究の最終段階となった。種分化研究に関しては、ビクトリア湖産シクリッドのアミノ酸受容体であるV2R遺伝子群、および生殖に関わるフェロモン受容をおこなうと予想されるV1R遺伝子群の解析をおこなった。V2R遺伝子については、他のモデル魚種と比較してシクリッドのV2R遺伝子の数が最も多いことを明らかにした。またV1R遺伝子群に関しては、東アフリカ産シクリッドの進化の過程で急激に非同義置換が蓄積した事を明らかにした。さらにこれらの遺伝子群について、数百万年前に誕生した二つの対立遺伝子座が長い期間多型状態で維持されていることが明らかとなった。これらの発見はシクリッドにおける嗅覚の重要性を示唆しており、シクリッドが視覚のみに大きく依存しているという定説を覆すものである。特にV1R遺伝子にはフェロモン受容が種間で大きく変化させるような進化圧が働いたと考えられ、種分化への関与を強く示唆している。哺乳類進化に関しては、平成24年度までに発見したエンハンサーのうち3つに関してノックアウトマウスの解析をおこない、特にAS071エンハンサーの欠損マウスでは、制御対象となる遺伝子の発現、およびその下流遺伝子の発現に影響を及ぼすことを明らかにした。また二次口蓋で機能するAS3_9エンハンサーに関しては、哺乳類の祖先で複数の転移因子の機能獲得が段階的に起こったことを明らかにした。一方で脳梁形成に関与するAS021エンハンサーの成立過程を明らかにした。これらの結果はいずれもAmnSINE1からどのようにエンハンサーが進化したのかを解明するものであり、哺乳類におけるシス制御配列の新たな獲得機構を提唱できるものである。以上のように、本研究では「新種の出現」に至る種分化と新規形態獲得の分子メカニズムに関して新しい知見を得ることができた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (1件)
Genome Biology and Evolution
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
DNA Research
Cytogenetic and Genome Research
巻: 142 ページ: 112-120
10.1159/000356128
Genome Res
巻: 23 ページ: 1740-1748
10.1101/gr.158105.113
PLoS One
巻: 8 ページ: e74629
10.1371/journal.pone.0074629
巻: 8 ページ: e74088
10.1371/journal.pone.0074088
Molecular Phylogenetics and Evolution
巻: 69 ページ: 980–993
10.1016/j.ympev.2013.06.007