研究概要 |
食餌制限は、哺乳類も含め、多くの生物種において、最も効果的で再現的な寿命延長の方策である。我々は、寿命研究のモデル生物として最も研究の進んでいる線虫を用いて、カロリー制限(Calorie Restriction(CR),慢性的なカロリー摂取の制限)と断続的飢餓(Intermittent Fasting(IF),自由摂食と飢餓を繰り返す)による寿命延長の分子機構について研究し、Rheb(Rasスーパーファミリー遺伝子)経路の抑制が、カロリー制限による寿命延長を模倣するとともに、断続的飢餓による寿命延長には、Rheb経路は必要であることを明らかにした。マイクロアレーによるゲノムワイドの遺伝子発現解析により、飢餓により制御される遺伝子群を体系的に解析した結果、カロリー制限による寿命延長に関与する遺伝子群と断続的飢餓による寿命延長に関与する遺伝子群のそれぞれの候補遺伝子群を同定することができた。今後、これら候補遺伝子群の解析を進める予定である。同じく線虫を用いて、ERK1/2MAPキナーゼ経路が寿命を正に制御することを見出した。予備的な結果から、ERK1/2経路の下流で、転写因子SKN-1が機能していることが示された。近年、寿命制御と体内時計との関連が報告されて注目されているが、我々は、概日リズムの新しい制御機構として、CK2の関与を見出した。アフリカツメガエルの初期胚発生における解析の結果、ERK1/2経路により転写抑制を受ける遺伝子として同定した一回膜貫通タンパク質EIG121Lが、初期胚発生において必須の機能を果たしており、表皮形成に関与することを見出した。その分子機構を解析中である。最も新しく見出されたMAPキナーゼファミリー分子であるERK7のアフリカツメガエルオーソログを同定し、初期胚発生に不可欠の機能を有していることを明らかにした。
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