研究概要 |
食餌制限は、哺乳類も含め、多くの生物種において、最も効果的で再現的な寿命延長の方策である。我々は、カロリー制限(Calorie Restriction(CR),慢性的なカロリー摂取の制限)と断続的飢餓(Intermittent Fasting(IF),自由摂食と飢餓を繰り返す)による寿命延長の分子機構について研究し、前年度までに、Rheb/TOR経路が、線虫において断続的飢餓による寿命延長に必要であることを明らかにした。また、その分子メカニズムとして、飢餓ストレスにより誘導されるインスリン様シグナル伝達経路エフェクターDAF-16の核移行にRheb/TOR経路が必要であることを示した。寿命延長における飢餓ストレスの重要性が示唆されたので、飢餓ストレスよる遺伝子発現をより詳細にゲノムワイドで解析することとし、その予備的実験を開始した。さらに、飢餓ストレスにより活性化するMAPキナーゼJNK経路のIFによる寿命延長における役割を見出した。同じく線虫を用いて、ERK1/2MAPキナーゼ経路が寿命を正に制御することを見出し、その分子機構として、ERKによるSKN-1のリン酸化、SKN-1によるインスリン様ペプチドの発現抑制、その結果としてのDAF-16の活性化が重要であることを明らかにした。アフリカツメガエルの初期胚発生における解析において、一回膜貫通タンパク質EIG121Lが、表皮形成に関与することを見出した。その分子機構として、EIG121LがBMP受容体と結合することにより、BMP刺激に対する感受性を増大させていること、すなわち、EIG121LがBMPシグナル伝達経路の正の制御因子であることを示した。アポトーシス制御因子として知られていたSGK-1の初期発生における機能を解析し、内胚葉と中胚葉に発現しているSGK-1が外胚葉でのアポトーシスを抑制していること、またその分子機構を明らかにした。
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