研究概要 |
断続的飢餓(断続的絶食)という食餌制限の手法によって、ストレス耐性および寿命が促進される場合の分子的基盤を明らかにするために、飢餓ストレスによる遺伝子発現の網羅的解析を行い、それを担う転写因子として、AP-1転写因子を同定した。AP-1転写因子は、JUN-1とFOS-1のヘテロ二量体であるが、JUN-1とFOS-1が共にストレス耐性と寿命の延長に重要な役割を果たすことを示した。また、線虫JNKの一つであるKGB-1が、AP-1転写因子の上流で働くことを明らかにした。さらに、このKGB-1/AP-1シグナル伝達経路がユビキチン/プロテアソームシステムを活性化することにより、タンパク質分解を促進することが寿命延長に重要な役割を果たすことを示した。以上の結果は、飢餓(絶食)刺激から寿命延長に至る分子機構の解明に大きく貢献するものである。また、寿命制御に関わる新たなシグナル伝達経路についての予備的な結果も得た。発生過程におけるMAPK経路ファミリー分子の機能を調べ、MAPKKKファミリー分子であるMLTKが軟骨形成に必須の役割を果たすことを示し、SOX9,SOX5,SOX6転写因子とMLTKとの関係を解析した。MAPKファミリー分子であるERK7が表皮形成に関わることを示し、その分子機構の解析を進めている。Hippoシグナル伝達経路の初期胚発生過程における役割を解析するための予備的実験に着手した。
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