前年度までに断続的飢餓(断続的絶食)という食餌制限の手法によって、ストレス耐性が増し、また寿命が延長される分子メカニズムについて解析し、KGB-1(JNK)-JUN-1/FOS-1経路が重要な役割を果たすことを示した。また、その経路がユビキチンプロテアソームシステムを活性化することも示した。食餌制限は、実際に食餌が制限されるという要因と、「餌がない」というストレスシグナルという要因の両者のメカニズムで寿命を制御していることが今年度の研究で示唆されてきた。そこで、食餌制限以外のストレスが寿命およびストレス耐性に与える影響について解析を開始し、さまざまなストレスが寿命とストレス耐性にポジティブな影響を与える条件を網羅的に探索し、一定の条件を見出すことができた。この解析を推進し、ストレスシグナルと寿命の関係性を明らかにする予定である。初期胚発生に関して、表皮形成機構とシリア形成機構について、そこに関与する新たな因子群の同定に迫る成果を得た。それら因子群の間の相互作用の有無について検討を加えるとともに、それら因子群の作用の分子メカニズムについて、さらに研究を進めている。また、前年度までに実験を開始したHippoシグナル伝達経路の初期胚発生過程における役割についての解析が進展し、Hippo経路の構成因子の初期胚発生における重要な役割を理解する手がかりを得た。発生に関わる転写因子の作用機構についての詳細な解析を行い、筋肉細胞分化と脂肪細胞分化が互いに排他的に起こることを明らかにし、そのメカニズムを解明した。
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