研究概要 |
1)昨年度に引き続き、輸送効率を上げるFliH_2FliI複合体、固定子でプロトンチャネルでもあるMotA_4MotB_2複合体、あるいはそのホモログであるMotP_4MotS_2複合体、MotBのC末端側にありペリプラズム領域でペプチドグリカン層や基部体に結合すると考えられているMotBc、輸送ゲートを構成する膜蛋白質(FlhA, FIhB ,FIiO, FIiP, FliQ, FliR)などを、それぞれ大量共発現系から精製し、x線結晶解析や低温電子顕微鏡像解析による構造解析を目指してきた。MotP_4MotS_2複合体とFliPのペリプラズムドメインについては結晶が得られたので、その解析に向けて結晶の質の改善を進めている。FIiH_<C2>FIiI複合体の結晶構造については現在精密化を進めている。 2)野生株から精製したべん毛基部体や、構成蛋白質の部分欠損により変化した基部体の構造についての低温電子顕微鏡による解析では、画像解析法の工夫により分解能が向上し、X線結晶解析で得られている分子モデルのドッキング精度が向上し、より信頼性の高いモデルの構築が可能になりつつある。 3)野生型サルモネラ菌は直径1ミクロンで、その凍結試料は加速電圧300kVの電子線にとっても厚すぎて透過しづらく、電子線クライオトモグラフィーによるべん毛基部体の解析は到達解像度が10nm以下に留まる。そこで、細胞分裂に関わるFtsZを大量発現させて直径0.4ミクロン以下のミニセルと呼ばれる細胞を大量に作成する条件を確立し、べん毛の数を増やす遺伝学的工夫も加えることで、複数のべん毛を有するミニセルの産生条件を確立した。この試料に電子線クライオトモグラフィーを適用し、細胞中で動作中のべん毛基部体、すなわち固定子や輸送装置が結合して動作中の基部体の立体構造解析を可能にした。
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