研究課題/領域番号 |
21227007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 正幸 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40114706)
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キーワード | 遺伝学 / 発生・分化 / 減数分裂 / 情報伝達 / RNA |
研究概要 |
本年度論文発表に至った三つの主要な研究項目につき記載する。まず減数分裂特異的mRNAの選択的除去機構について、除去の標的となる減数分裂特異的mRNAにはDSRと呼ぶ領域があり、Mmi1タンパク質がそこに結合してmRNAを分解に導くが、DSR配列には一見規則性がなかった。今回、DSRの基盤はMmi1に親和性のある4種の6塩基の配列で、それらが複数集合して強いDSR活性が生じることを証明した。さらに、Mei2タンパク質と結合して核内ドット構造を作り、Mmi1を引き寄せて抑制する非コードRNAのmeiRNAには、上記の6塩基配列を多数含む3'テイル部分をもつ分子種が存在した。すなわち、meiRNAはMmi1タンパク質をおびきよせる疑似餌の役割を果たすという興味深い機構が浮かび上がってきた。次に、Mei2の新奇機能の解析から、分裂酵母では窒素源飢餓下にストレス応答性のMAPキナーゼがCTDK-Iをリン酸化し、CTDK-1がRNAポリメラーゼIIのC末端領域(pol II CTp)をリン酸化して、mθ12遺伝子の転写因子をコードするste11遺伝子の転写を促進することが分かった。しかも、Mei2はフィードバック制御により、ストレス応答性MAPキナーゼ経路を活性化していることも分かった。一方、全く予期せぬ現象として、分裂酵母の減数第二分裂において、紡錘体の形成を阻害しても染色体分配が進行することを見いだした。微小管阻害剤によって極間微小管を消失させても、紡錘極体(SPB)から構築が始まる前胞子膜が、複製した紡錘極体を分離し、さらにそこに結合した染色体を両極に分離させる能力をもつことが明らかとなった。染色体分配機構の進化を考える上で興味深い発見と思われる
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書記載の3項目、(1)選択的除去の分子機構、(2)Mei2の新奇機能の解明、(3)減数分裂におけるTORキナーゼの役割、について順調に解析が進み、(3)については論文投稿に遅れがあるものの、それぞれ有意な成果が得られている。さらに、減数第二分裂の一時期に核膜の透過性が増大し、細胞質と核質の隔離が消失すること、また第二分裂では紡錘体に代わって前胞子膜が染色体分配を進行させうるという、予期せぬ発見もあった。
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今後の研究の推進方策 |
mRNAの選択的除去に関わる分子機構について、主因子Mmi1が作る複合体の構成因子を明らかにし、どのようにヌクレアーゼexosomeと相互作用するかなど、機能との関連を調べる。減数分裂のマスター制御因子Mei2タンパク質について、活性型Mei2からストレス応答MAPキナーゼ経路への正のフィードバックを仲立ちする因子や機構を明らかにする。またCTDK-Iによるste11遺伝子の転写活性化機構を解析する。Mei2ドット構造が染色体に留まる上での非コードRNA meiRNAの役割を解明する。分裂酵母TORキナーゼ経路について、機能欠損すると、TORC1が欠けた場合と同様に栄養源存在下で有性生殖を開始してしまう突然変異株の解析を進め、これらとTORC1との関連、その原因遺伝子の栄養源識別機構における役割について明らかにする。計画の変更はない。
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