研究課題/領域番号 |
21227007
|
研究機関 | 公益財団法人かずさDNA研究所 |
研究代表者 |
山本 正幸 公益財団法人かずさDNA研究所, その他部局等, 所長 (40114706)
|
研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
|
キーワード | 遺伝学 / 発生・分化 / 減数分裂 / 情報伝達 / RNA / 微小管 |
研究概要 |
論文に成果発表した主要な研究項目につき記載する。まず減数分裂特異的mRNAの選択的除去機構の研究では、除去の対象のmRNAを認識するMmi1タンパク質が、ヘテロクロマチン形成にも関与するという発見があった。Mmi1は細胞増殖時に、RNA依存性の転写サイレンシングに関わるRITS複合体を減数分裂特異的遺伝子に呼び寄せ、その染色体領域にヘテロクロマチン構造を誘導して遺伝子の転写を抑制していた。また、選択的除去機構を抑えるために、非コードRNAのmeiRNAが減数分裂促進因子のMei2タンパク質と結合して自己の遺伝子座位にドット構造を作り、そこにMmi1を引き寄せて機能抑制することを先に示したが、このドット構造は減数第一分裂における相同染色体の対合開始点としても機能していることが判明した。特に、meiRNAが対合開始反応に重要な役割を持つことが明らかとなった。いっぽう、減数分裂開始時に、分裂酵母細胞における中心体相同物であるSPB(spindle pole body)の構成にダイナミックな変化が起こっていることが見いだされた。種々のSPB構成因子を蛍光により可視化したところ、体細胞分裂から減数分裂への移行とともに、複数のSPB構成因子がSPBから離脱し、減数第一分裂開始の直前に再びSPBに集結してきた。このSPB再編成の初期段階には接合フェロモンに応答するMAPキナーゼが関与すること、減数第一分裂開始前のSPB再構築にはサイクリン依存性キナーゼ1およびPoloキナーゼが必要とされることを解明した。さらにまた、分裂酵母細胞の増殖と有性生殖の切り替え制御におけるTORキナーゼ複合体の役割の解析では、動物細胞におけるS6K1に相当する、TORC1の標的でかつリボソームタンパク質S6をリン酸化するPsk1キナーゼを同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書記載の3項目、(1) 選択的除去の分子機構、(2) Mei2の新奇機能の解明、(3) 減数分裂におけるTORキナーゼの役割、に関連してそれぞれ新しい知見が得られている。加えて、減数分裂期には、体細胞分裂期には決して見られない、SPB構成のダイナミックな変化が起こっていることを明らかにした。本年度は研究代表者の定年に伴う研究室の移動があり、機器および研究材料の搬送、設置、調整などに多くの時間と労力を裂かれた。しかし幸い、海外も含めていくつかの共同研究が非常に順調に進み、当該研究課題に大きな遅れを出すことなく研究を推進できたと総括している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度に突入するので、mRNA の選択的除去に関わる分子機構については、Mmi1が作る複合体の構成因子を調べ上げ、どのようにヌクレアーゼexosomeと協力して選択的除去を可能にしているかのモデルの概形を作る。減数分裂のマスター制御因子Mei2 タンパク質については、未だ不明な点が多い活性型Mei2からストレス応答MAPキナーゼ経路への正のフィードバックを仲立ちする因子や機構を明らかにする。またMei2との関連で、CTDK-Iによるste11遺伝子の転写活性化機構を解析するとともに、非コードRNA meiRNAがいかにして自己の遺伝子座位に留まるか、その分子基盤を解明する。分裂酵母TORキナーゼ経路については、Mei2との関わりを突き止めているので、この点を掘り下げ、いっぽう、機能欠損するとTORC1が欠けた場合と同様に栄養源存在下で有性生殖を開始してしまう突然変異株の解析を進め、TORキナーゼと栄養源識別機構の関わりに確実な手がかりを得たい。計画の変更はない。
|