研究課題
平成23年度の成果を研究項目毎に述べる。1、 変異株の解析 平成22年度に引き続き、新たな変異株の検索と、既に得られている変異株についての遺伝解析を行った。また、次世代sequencerによる配列解析を並行して行った。カルシウムの変異株については平成22年度までにほぼ同定していた細胞壁多糖の合成に関与すると思われる遺伝子の細胞内局在や活性、細胞壁多糖成分への影響を検討したところ、遺伝子産物は膜に局在しており、細胞壁成分の中ではカロースの含量に変化が見られることを示唆する結果を得た。他のカルシウム変異株についても遺伝解析を進めたところ、最初に同定した細胞壁多糖の合成に関与する遺伝子や、それ以外の遺伝子が原因である可能性が高まった。また、マグネシウムに関する変異株についてもマッピングによって原因遺伝子の存在する領域を狭め、その領域にどのような変異があるかを検討したところ、膜タンパク質遺伝子に変異があり、この遺伝子が原因であることがほぼ確かめられた。また、銅やマンガンについての新規変異株を同定することに成功した。銅の要求性が高まった系統については、2系統について遺伝子マッピングを進め、一つの系統には原因遺伝子が二つあることを明らかにしていた株については、実は原因遺伝子は一つで、マッピングに用いた系統由来の変異が影響を及ぼしていることを明らかにした。2、 ホウ素栄養による輸送制御機構の解明 ホウ素輸送体NIP5;1のmRNAの蓄積がmRNA分解のレベルで制御について、5’非翻訳領域の約20塩基対の領域の中に存在する制御に必要な配列を同定すると共に、その配列による制御機構についての検討を進めた。3、無機元素輸送の定量的理解へ向けてのアプローチ 根での輸送モデルの構築に向けて根の細胞プロファイルを反映したモデルの構築を行い、根の先端にホウ素が蓄積している可能性を示唆した。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究は当初の想定通りの進展に加えて、栄養輸送制御におけるmRNA分解という新しい現象を明らかにすることができ、また、ホウ素輸送の数理モデルから予想しない結果がえられ、その意義付けが可能になりつつあることから、予想を越えて進展していると感じている。
今後も現在の研究を発展させて行く。より多くの栄養ホメオスタシスに関与する遺伝子を同定すると共に、それらの機能解析を進める。また、ホウ素栄養制御については、ホウ素に応じたmRNA分解機構の解析を進めていくと共に、BOR1の分解や局在の生理的意義について明らかにする。また、数理モデルをさらに制度高く構築するとともに、予測の検証実験を行って行く。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (19件) (うち招待講演 3件)
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