研究課題
抗癌剤候補化合物として発見されたFR901464を改変して作成した安定誘導体Spliceostatin A(SSA)はスプライシング因子複合体SF3bに結合してスプライシング反応を阻害するとともにp27 pre-mRNAなど一部の未成熟mRNAの核外移行を引き起こす。その結果pre-mRNAからタンパク質が合成され、イントロンの配列の翻訳を引き起こすことがわかっている。こうした現象がゲノム全体に起こるかどうかを確認するため、RNA-seqを行ってイントロン配列の翻訳がおこるRNA種を網羅的に解析した。予想通りp27 pre-mRNAの細胞質での蓄積を確認した一方で、核内ノンコーディングRNAであるMalat1の分断化と細胞質での蓄積が見られた。SSAのターゲットであるSF3bの役割を調べたところ、SF3bをノックダウンしてもMalat1の分断化はおこらなかったが、SSAの効果は解消された。これらの結果から、SSAは単にスプライシングを阻害するだけでなく、SF3bに結合することで新たな活性を発揮することが予想された。SSA-SF3b複合体の標的を同定する目的で、siRNAスクリーニングを行ったところ、microRNAの代謝に関連する因子が浮上した。次にスプライシング阻害が転写装置に与える影響について詳細に解析するため、イントロンを持つレポーター遺伝子とMS2-GFPを用いたイメージング法を利用し、レポーター遺伝子のスプライス部位に導入した変異の効果を解析した。その結果、転写されたRNAはRNAポリメラーゼと共に転写部位に蓄積した。一方、SSA処理を行い、スプライシング因子のスプライス部位へのリクルートを許容した上でスプライシングを阻害した場合には、驚くべきことに転写複合体の解体がおこり、RNAポリメラーゼ、一次転写物の双方が転写部位から脱落した。これらのことからスプライシングの進行を監視して転写終結を制御する機構の存在が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
スプライシング阻害剤を用いてスプライシングとpre-mRNAの監視機構、転写との関係を明らかにすることを最大の目標としているが、RNAイメージング法を用いて、スプライシングが転写終結を介してpre-mRNAの監視を行っていることを明らかにした。さらにSSAは単にスプライシングを阻害するだけでなく、SF3bに結合することで新たな活性を発揮するという予想外の発見もあった。
スプライシングの持つpre-mRNAの監視機構のメカニズムを明らかにする。そのために前年度から立ち上げているChIPシーケンス実験を完遂させ、SSA処理により転写終結するゲノム上の位置とピストンの修飾との関係を明らかにする。次にSSA-SF3b複合体の標的因子を明らかにする。そのために生理的条件下でSSA-SF3b複合体に結合する因子をMS解析により同定し、核内ノンコーディングRNAの局在における機能を解析する。
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