研究課題
抗癌剤候補化合物として発見されたFR901464を改変して作成した安定誘導体Spliceostatin A(SSA)はスプライシング因子複合体SF3bに結合してスプライシング反応を阻害するとともに、イントロン配列を持ったpre-mRNAの核内繋留を阻害することにより、pre-mRNAの翻訳を引き起こす。昨年度実施したSSA処理細胞のRNA-seqによる網羅的な解析から、SSAによって一部のmRNAが転写途中でポリA付加を受けることがわかった。ポリA付加部位を詳細に解析するため、ポリAを含むシーケンスリードをゲノムにマップしたところSSAによるポリA付加はイントロンで最も頻繁に起こっていた。近年、疾患に伴ってポリA付加部位の変化が報告され(選択的ポリアデニル化)、がんなどとの関連が注目されている。従ってこのSSAによるmRNAポリA付加異常はSSAによって引き起こされる生理活性の一部を担うと考えられる。また、このSSAによる異常なmRNA生成にはSSAの標的であるSF3bの存在が必要であり、SF3bのノックダウンによってSSAの効果が消失した。同様のことは、pre-mRNAの核内繋留の阻害ついても観察されたことから、SSAは単にSF3bの機能を阻害するのではなくSF3bを足場に数々のRNA代謝異常を引き起こしていることがわかった。そこでSSA-SF3b複合体のプロテオミクス解析を行い真の標的候補を得ている。
2: おおむね順調に進展している
スプライシング阻害剤を用いてスプライシングとpre-mRNAの監視機構、転写との関係を明らかにすることを最大の目標としているが、RNA-seq法を用いて、ポリA付加部位の変化がゲノムワイドに起こることを見いだした。スプライシング因子がポリA付加を制御するという新しい発見であると考えている。
スプライシングの持つpre-mRNAの監視機構のメカニズムを明らかにする。そのためにスプライシング因子によるポリA付加の制御機構を解明する。次にSSA-SF3b複合体の標的因子を明らかにする。そのために生理的条件下でSSA-SF3b複合体に結合する因子をMS解析により同定し、核内ノンコーディングRNAの局在における機能を解析する。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 6件)
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