研究課題/領域番号 |
21228005
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塚本 勝巳 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10090474)
|
研究分担者 |
大竹 二雄 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (20160525)
金子 豊二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (70221190)
井尻 成保 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (90425421)
青山 潤 東京大学, 大気海洋研究所, 特任准教授 (30343099)
|
キーワード | ウナギ / 種苗生産 / 催熟 / レプトセファルス / 飼育技術 |
研究概要 |
(1)成熟過程 ■卵巣遺伝子発現解析:マリアナ沖で得られた産卵直後のニホンウナギの雌魚,排卵卵を腹腔内に持った雌魚、および最終成熟期直前のオオウナギ雌魚の卵巣について、次世代シーケンサーを用いて天然成熟ウナギ卵巣ESTデータベースのプラットフォームを完成させた。また人工魚の最終成熟を進行させる分子機構の解析を行い、最終成熟能と排卵能はそれぞれ独立して獲得されることを明らかにした。 ■産卵回遊行動:銀ウナギに16基のポップアップタグを付けて利根川沖と遠州灘に放流した。浮上したタグのデータからウナギは昼間水深600~800m、夜間は200m前後の間で明瞭な日周鉛直移動をすることがわかった。これより自然催熟技術において5℃と15℃幅の日周変動水温が有効であることが示唆された。 (2)産卵過程 ■回遊履歴:産卵場から得た親魚の耳石ストロンチウム分析から各個体の成長期の生息域を推定したところ、海ウナギと河口ウナギが92%を占め、もっぱら淡水域で過ごした川ウナギは8%であった。■天然卵採集:2011年の白鳳丸航海で天然ウナギ卵の採集に成功した。卵とプレレプトが水深150~160mに集中分布していたことから、人工種苗生産における卵管理と仔魚飼育の水温は25℃前後が最適とわかった。■産卵回数:マリアナ沖で得られたニホンウナギ雌とオオウナギ雌の卵黄形成中期の卵巣に、排卵後濾胞が多数観察された。このことからウナギは一産卵期に複数回産卵することがわかった。 (3)発育過程 ■浸透圧調節機構:様々な発育段階のレプトの体液浸透圧は、海水の浸透圧の半分以下に保たれていることがわかった。このことはレプト期のウナギにも既に浸透圧調節能が備わっていることを示す。またレプトの水飲み現象を調べた結果,直腸に達するまでに飲み込まれた海水中のおよそ70%の水が吸収されることがわかった。このことは,レプト期のウナギは成魚とほぼ同様のメカニズムで体液浸透圧を調節していること示唆する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天然卵の発見と多数の親魚の捕獲は当初の予想以上の成果であるが,大量生産へのブレークスルーは予測不能である。また次世代シーケンサーを用いた包括的遺伝子解析に方向転換したが、これは研究を加速した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)成熟過程においては,水温、日長の制御の制御を併用して自然催熟熟技術の開発を行う。 (2)産卵過程においては,人工魚を用いた最終成熟・排卵の一連サンプルを次世代シーケンサーで解析することで,最終成熟から排卵に至る分子メカニズムを解明する。 (3)発育過程においては,飼育システムの根本的な見直しを行う。例えば孵化後僅か2日で水を飲むことを利用してごく初期から給餌することで、摂餌開始期の大減耗を回避し、生残率を大幅に向上させる。
|