研究課題/領域番号 |
21228007
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
磯貝 明 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40191879)
|
研究分担者 |
岩田 忠久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (30281661)
和田 昌久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (40270897)
五十嵐 圭日子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (80345181)
木村 聡 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (00420224)
斉藤 継之 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (90533993)
|
キーワード | セルロース / ナノフィブリル / TEMPO / 触媒酸化 / バイオマス / キチン / ナノ材料 / ミクロフィブリル |
研究概要 |
天然セルロースのTEMPO触媒酸化により、そのフィブリル表面に露出している1級水酸基を選択的に全てカルボキシル基に酸化することができ、フィブリル表面に高密度でマイナス荷電を導入できた。その結果、軽微な水中解繊処理によりフィブリル間に荷電反発と浸透圧効果が作用し、木材セルロースからは幅約4nm(透過電子顕微鏡による測定)の完全ナノ分散TEMPO酸化セルロースナノフィブリル(TOCN)が得られた。原子間力顕微鏡(AFM)による高さ測定からは、幅は約3nmであり、原理的にAFMの値の方に信頼性がある。このTOCNをポリ乳酸フィルム上に僅か1μm弱の厚さでキャストした複合フィルムをしたところ、酸素透過度が約1/7000にまで低下し、著しく高い酸素バリア性が発現した。また、フィルムは高い光学透明性、高強度、高弾性率、著しく低い線熱膨張係数(2.7ppm/K)を示し、ディスプレー基盤としての特徴も有していた。木材セルロースよりもフィブリル幅の大きな綿、ホヤセルロースをTEMPO触媒酸化-水分散して得られたゲルから調製したフィルムの酸素バリア性が低かったことから、フィブリル幅が3nmと超極細で高結晶性であることが酸素バリア性の発現に寄与していた。これらの結果から、新規バイオナノ素材であるTOCNが生分解性のある高機能バリア性フィルム材料に応用可能であることが判明した。そのほか、TEMPO触媒酸化条件と、水溶性のセロウロン酸の分子量変化、セルロースII型セルロース試料のTEMPO酸化から調製した新規ナノウィスカー(短繊維)が得られることが明らかになり、TEMPO酸化条件と得られる酸化生成物の構造解析等も行い、多くの興味深い知見を得ることができた。
|