研究課題/領域番号 |
21229002
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 茂貴 九州大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (10170672)
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研究分担者 |
原島 秀吉 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (00183567)
野村 政壽 九州大学, 医学部付属病院, 講師 (30315080)
永次 史 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90208025)
新藤 充 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (40226345)
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キーワード | 核酸医薬 / 薬物送達 / 2型糖尿病 / 疾患モデルマウス / ミトコンドリア / 機能性人工核酸 |
研究概要 |
本研究では、遺伝子応答性インテリジェント人工核酸を搭載した臓器特異的ナノDDSを合成し、疾患モデル動物での機能検証を経て、疾患関連mRNAおよびmiRNAを標的とするナノ分子標的治療薬の創製を目指す。 佐々木グループ:安定で2価金属イオン依存性の小さい、高い反応性の官能基転移人工核酸を開発した。詳細な分析により官能基の立体化学に依存することを見出した。原島グループとの共同でミトコンドリア病因遺伝子であるtRNALeu(UUR)遺伝子を標的にした官能基転移核酸を設計し、機能性核酸を合成した。標的RNAとの反応ではNiCl_2を添加しない条件でも効果的に標的シトシンを修飾できることを確認した。野村グループとの共同により、細胞内でmiRNAを標的とする評価系で人工核酸の効果を検討し、アンチmiRNA効果を確認した。mRNAに対して官能基転移反応が高収率で起こることを確認した。この修飾mRNAはタンパク質発現には大きな効果を与えないことが分かった。 永次グループ:2'-OMe型AVPが標的チミンに対して高選択的に反応することを見出した。前後配列が3'GXC5'に治しては、中性条件下、RNA中のウラシルに対して高効率に反応し、細胞内miRNAの阻害に成功した。 新藤グループ:各種のボンクレキン酸誘導体おまび単純化化合物を検討し、高活性なアポトーシス阻害物質を開発した。原島グループとの共同によりボンクレキン酸搭載MITO-Porterは抗アポトーシス効果を10-100倍向上させた。 野村グループ:肝細胞特異的Drp1KOマウスを作成し、表現型を解析したところインスリン感受性が良好で高脂肪食でも太らないことがわかり、新しい治療標的として有望であることを発見した。 原島グループ:これまで、ミトコンドリア移行性素子MTSを用いることにより移行能を飛躍的に向上させたMITO-Porterを構築し、mtDNAの存在するマトリクス領域へ送達可能である事を示した。オリゴ核酸のMITO-Porterへのパッケージング技術も確立しているので今後の評価を信頼性よく行うため、本年度はランゲルハンス氏島ミトコンドリアダイナミクスを観察できる系を確立した。siRNA封入R8-GALA-MENDを用いて肝臓における内在性遺伝子の発現抑制に成功したが、その阻害効果がin vitroとin vivoが異なっていた。本年度は詳細に検討することにより、効果の違いが細胞内取り込みによることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2種類の新規機能性核酸の開発に成功し、細胞内条件での検討および原島グループとの共同によるDDS検証がin vitroおよびin vivoで進行している。標的遺伝子は初期に設定して継続中のものと、期間中に変更したものがあるが、両方について機能性核酸による標的化検討が進行している。特にミトコンドリアと肝臓への標的化が具体的に進行し、低分子機能性分子の開発および疾患モデルマウスの開発が順調に進展している。また研究グループ全体の検討会およびグループ間の共同研究も進展しており、一部動物による評価が遅れている部分があるが、おおむね、糖尿病治療に向けた新しいナノ分子標的薬の創製にむけた検討が順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
機能性核酸(官能基転移およびクロスリンク)miRNAおよびmRNA標的による細胞実験を継続し、基礎データを踏まえて動物実験へと移行する。ミトコンドリアmRNA標的化実験を行い、原島グループとの共同により単離ミトコンドリアでの機能検証を行う。野村グループによって新しく標的としての有効性が確認されたDrp1のsiRNAによる阻害実験を行い、肝臓標的の糖尿病治療法としての可能性を検証する。新藤グループのミトコンドリア作動性低分子薬および永次グループによるクロスリンク核酸のプロドラッグ化を検討する。機能性核酸のin vivo利用に向けグループ間の共同研究をより活発化する。
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