研究課題
1.大腸がん細胞の転移を水先案内する未分化骨髄球の研究今年度はCCR1プロモーターでGFP変異体の蛍光タンパクであるVenusを発現させるCCR1レポーターBACトランスジェニックマウスを作製した。現在までにこのマウスを作出することに成功し、骨髄や脾臓においてVenus陽性細胞の殆どが骨髄球系の細胞であること、蛍光強度とCCR1発現量が比例したことから、Venus陽性細胞がCCR1発現細胞であることが確認できた。予備実験から、大腸がん肝転移モデルにおいてVenus陽性細胞が転移巣に集積する事を確認している。今後この細胞をFACSにより単離し、マイクロアレイ解析により特徴付けることを検討している。さらに、このCCR1発現細胞が転移を助けるメカニズムについて今後検討していく。2.がん細胞の転移を制御するAesとNotchシグナルの機構解明前年度までに、大腸癌細胞をピストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)で処理するとAESm RNA量が減少することが分かっている。経時変化を解析した結果、HDACi添加後すぐにAESm RNA量は減少し始めること、また、タンパク合成阻害剤であるシクロヘキシミドはこの減少に影響を及ぼさないことが分かり、タンパクの新規合成を介さないAES発現制御様式が示唆された。3.大腸がんの転移における、発がん初期シグナルや分子の評価大腸がんマウスモデルであるApc/Smad4複合変異マウスの腫瘍においては、mTORC1経路の活性化が観察される。このマウスにmTORC1阻害剤を投与したところ、非投与群と比べて阻害剤投与群では明確な生存期間の延長が確認できた。また腫瘍の数も阻害剤投与により減少しており、同時にがん細胞の浸潤も抑制できた。さらにmTORC1阻害剤の投与により腫瘍における大腸がん細胞増殖及び血管新生が抑制されている事が確認できた。また、CDX2はオートファジー必須酵素であるATG7に結合し、オートファジーを促進することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
おおむね当初の計画通りに進行している。CCR1レポーターマウスの樹立に成功しており、これまで極めて困難だったCCR1発現細胞の単離が可能になるなど今後の解析の有用なツールになると期待される。また、HDACiがAES nRNAの発現を抑制するという予期しなかった非常に興味深いデータも得られている。新たな遺伝子発現制御の解明に繋がる可能性があり、積極的に推進する。また、mTORC1は悪性化阻止の有力な標的の一つであることを実証できつつあり、その詳細な阻害機序を解析することでさらなる標的の同定や効率の良い予防法の確立へと結びつけたい。
今後は、H24が最終年度となるので、進行中の実験を年度末までにまとめて論文として発表することに努めたい。CCR1の転移促進機構についてはレポーターBACトランスジェニックマウスを中心とした解析を、また、Aesによる転移抑制機構については、AES/Aes遺伝子の発現制御の解析に加え、Notchシグナルの転移促進の分子機構の解析に努力を集中する予定である。一方、CDX2とオートファジーの関連については、研究分担者がH23.12.31付けで転出し、福井大学で続行したいとの意向なので、本学における遂行は中止する。
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すべて 雑誌論文 (17件) (うち査読あり 16件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
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