研究概要 |
1. IGFBP-4によるWntシグナル抑制と心筋分化誘導の分子機構 これまでの検討によりIGFBP-4はLRP6の2量体形成を阻害することによりβ-catenin依存性のcanonicalWntシグナルを抑制することが明らかになっていた。さらに、IGFBP-4はLRP6をノックダウンした状態では、β-catenin非依存性のnon-canonical経路を活性化することが判明した。従ってIGFBP-4はcanonical経路の抑制だけでなく、non-canonica1経路を活性化することにより心筋分化誘導を促進している可能性が考えられた。 2. Wnt、Wnt inLibitorを用いた未分化幹細胞からの高効率心筋分化誘導法の確立 昨年度の検討からヒトiPS細胞ではWnt、Wnt inhibitorを組み合わせた分化誘導方法ではほとんど心筋細胞分化は誘導されず、ヒトiPS細胞に特化した分化誘導法の開発が必要であるものと考えられた。そこでBMPとJak-2阻害薬を併用したところ、ヒトiPS細胞からもある程度の効率で心筋細胞が分化誘導された。今後さらに高い効率で心筋分化を誘導する方法の開発を試みる。 3. Wntシグナルの心臓疾患発症における役割の解明 障害心筋で発現するWnt-like ligandを明らかにするために,Wnt-like ligandが結合すると考えられる可溶型Frz8受容体細胞外ドメイン(Frz8-CRD)に結合する分子の単離同定を試みたが、障害心筋に特異的に発現するFrz8-CRD結合蛋白は単離できなかった。そこで心不全モデルマウス血清からFrz8-CRD結合蛋白の同定を試みたところ、ある分子がFrz8-CRD結合蛋白として同定された。今後この分子によるWntシグナル活性化の分子機構を明らかにすることを試みる。
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