研究課題/領域番号 |
21229010
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小室 一成 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30260483)
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研究分担者 |
永井 敏雄 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00334194)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | 心筋細胞分化 / iPS細胞 / 心不全 / Wnt / C1q |
研究概要 |
1. Wntシグナルは未分化幹細胞から心筋前駆細胞への分化を正に制御する一方、心筋前駆細胞からの成熟心筋細胞への分化を抑制する。未分化幹細胞から心筋前駆細胞への分化を促進する作用について次世代シーケンサーを用いた網羅的解析を進めたところ、多能性を制御する転写因子の一つである遺伝子XがWntシグナルのエフェクター分子であるb-catenin/Tcf複合体およびWntシグナルの標的遺伝子であるBrachyury Tとともに細胞のエピゲノムを大きく変化させ、心筋前駆細胞特異的な制御領域を開放することが明らかになった。 2. ヒトiPS細胞を心筋細胞へと分化させる際に用いるWnt inhibitorをIWP2という化学物質に変更することで、より廉価に安定した心筋細胞分化誘導が開発できるようになった。またエピゲノムを変化させる薬剤を用いることでマウスES細胞からの心筋分化効率が著明に増加することを見出した。 3. 心不全モデルマウスの血中で増加するWntシグナル活性化物質として補体分子C1qを同定した。圧負荷による心不全モデルマウスの心臓ではC1q、c1r、C1sの発現が上昇していること、Wntシグナルの標的遺伝子の発現が上昇していることを見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画を超え、独自で作成したヒトiPS細胞で高効率かつ再現性の高い心筋分化誘導プロトコルを確立した上にその改善計画を進行している。 当初の計画を超え、心不全の病態形成にWntシグナルが関与する可能性を発見し、Wntシグナル活性化のリガンドとして補体分子C1qを同定しており、C1qおよびWntシグナルを標的とした心不全治療の可能性に着手できる段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
研究内容は当初の計画以上に進行しており、平成25年度も (1) Wntシグナルが発生時期特異的に心筋細胞分化を制御する分子機構を明らかにする、(2) Wnt、Wnt inhibitorを用いた未分化幹細胞からの高効率心筋分化誘導法を確立する、(3) Wntシグナルの心臓疾患発症における役割を解明する、という3つのテーマを中心に引き続き検討を行うとともにWntシグナル阻害による心疾患治療可能性に関する研究を推進する。
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