研究課題
本研究ではポリグルタミン病に対する分子標的治療法の開発を目指している。これまでの検討で、モノテルペン配糖体(paeoniflorin)が強力な分子シャペロン誘導作用を有することが明らかになっており、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)マウスモデルにおける体重、Rotarod、cage activityの悪化を有意に抑制し、生存率も有意に改善することが明らかとなっている。本年度はpaeoniflorin の作用機序を中心に解析し、本化合物がオートファジーやライソゾームに関連する遺伝子の発現を調節するTFEBの転写活性を増加させることを明らかにした。また、paeoniflorinが変異ARの分解を促進すること、およびそれがユビキチン―プロテアソーム系とオートファジーの双方に依存していることを、パルスチェイス等を用いて明らかにした。一方、AR-97Qマウス脊髄から抽出したマイクロRNAを用いて網羅的解析を行い、AR-97Qマウスにおいて高発現を認めるmiR-196aを同定した。miR-196aを培養細胞モデルに過剰発現させるとARのmRNA及び蛋白質発現量が低下し、そのメカニズムとしてmiR-196a がARのmRNAを安定化させるCUGBP2, Elav-like family member 2(CELF2)の発現を抑制することでARのmRNAの分解が促進することが明らかとなった。miR-196aを発現するアデノ随伴ウイルスベクター(AAV-miR-196a)を作成し、5週齢のSBMAマウス下肢の筋肉に投与したところ、筋注されたAAVは血行性に全身へ播種し効率よく中枢神経系に感染し、AAV-miR-196aを投与されたSBMAマウスでは運動機能の有意な改善がみられ、病理学的にも異常ARの蓄積や神経原性筋萎縮ならびに反応性グリオーシスの有意な改善を認めた。
2: おおむね順調に進展している
ユビキチン-プロテアゾーム系(UPS)を標的とした低分子化合物の探索・同定および分子シャペロン調節薬の開発と動物モデルを用いた効果の検証が予定通り進捗している。
Paeoniflorin以外の低分子化合物についても治療効果や安全性の検討を進める。また、SBMA患者iPS細胞から分化した運動ニューロンを用い、更なる病態抑止治療薬のスクリーニングおよび病態解析を進める予定である。
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