研究課題/領域番号 |
21229015
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 正樹 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70190999)
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研究分担者 |
山本 健 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (60274528)
藤田 博正 久留米大学, 医学部, 教授 (90156878)
梶山 美明 順天堂大学, 医学部, 教授 (70241239)
夏越 祥次 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (70237577)
田中 文明 九州大学, 大学病院, 助教 (30332836)
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キーワード | 遺伝子多型 / 三位一体解析 / 次世代シークエンサー / アレイCGH / 発現アレイ / スーパーコンピュータ / 17q25 / Notch1 |
研究概要 |
食道癌は、罹患率は低いものの消化器癌のなかで最も治療抵抗性であり難治性悪性腫瘍として知られる。われわれは平成17年~21年度まで本助成をいただき食道癌1071名の患者と2762名の対照者について遺伝子多型および環境要因を同時に解析することにより食道発癌危険因子を明らかにした(GUT 2010)。さらに、研究期間の延長を受け、真の食道発癌の予防あるいは進展治療のための、既知の概念を凌駕する全く新しい因子の同定(breakthrough)を目指している。すなわち食道癌の難治性を克服し治療成績向上のためには食道癌の発生、進展および治療感受性に関わる因子(遺伝子多型(宿主側要因)、遺伝子発現(腫瘍側要因)、疫学(環境側要因))を統合的に解析することが重要である。本データベースを基盤として、遺伝子アレイ、アレイCGHあるいは次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子変異解析により、全く新しい真の食道癌の発生・進展・転移に関連するドライバー変異やゲノムレベルの変異機構が明らかになり、真の分子標的を明らかにすることが期待される。 1)われわれは食道癌65症例のLMD後の原発巣癌細胞の発現遺伝子アレイからスーパーコンピュータによるEEM法(東京大学医科学研究所宮野悟教授による)を用いて食道癌で有意に発現が上昇している遺伝子module (gene-set)を抽出。またCGH arrayに対してGISTIC解析を用いて有意な増幅・欠損領域を抽出した。Broad InstituteやGEOに公開されているpublicな食道癌のデータベースとも比較したところ、ひとつの抽出した遺伝子群はDriverとなることを明らかにした(投稿中)。2)次世代シークエンサー(東京大学医科学研究所鈴木穣准教授)による原発巣のエキソーム解析の結果、癌特異的であり、各症例間あるいはシグナル経路上で共起するnon-synonymousな突然変異を100個以上同定してきた。たとえば家族性食道癌においてallelic imbalanceが多数存在する17q25領域の遺伝子変異(投稿中)や、重要な癌遺伝子Notch1における突然変異を世界ではじめて食道癌で明らかにした(投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた発現遺伝子アレイとアレイCGHの結果の統合的解析の結果、18個の遺伝子グループがゲノム変異を伴い発現を来す重要な食道癌関連遺伝子であることを明らかにしており、現在その1個について投稿中である。このほかの癌遺伝子候補および癌抑制遺伝子候補について鋭意解析中である。 他方、ごく最近の科学技術の進歩により開発された次世代シークエンサーをもちいた解析をとりいれて、ようやく結果を得ている。ひとつは家族性食道癌で注目していた領域の遺伝子変異であり(投稿中)、咽頭癌において発表された癌遺伝子Notch変異を食道癌で初めて報告する予定である(投稿中)。 以上、本年度末報告には論文掲載を報告しえなかったが、順調に進んでいることを報告したい。また、本助成の推進により、新年度さらなる食道癌の標的分子を世界に先駆けて明らかにできる。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子多型、疫学因子、臨床病理学的因子・予後再発情報のデータベースを基本情報として以下の解析をすすめる。 1)食道癌のアレイCGH、発現遺伝子アレイの結果についてスパコンによる統合解析を推進する。 2)次世代シークエンサーによるエキソーム解析により、真のドライバー変異と重要なpathwayを明らかにする。 3)胸腔鏡手術あるいは内視鏡的粘膜切除術の是非を決める上で重要なリンパ節転移と相関する遺伝子多型を明らかにする。 4)抗癌剤に対する抗腫瘍効果、あるいは有害事象を規定する遺伝子多型あるいはdriver遺伝子について明らかにする。
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