研究課題/領域番号 |
21229015
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 正樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70190999)
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研究分担者 |
鈴木 貞夫 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20226509)
山本 健 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (60274528)
夏越 祥次 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70237577)
梶山 美明 順天堂大学, 医学部, 教授 (70241239)
藤田 博正 久留米大学, 医学部, 教授 (20129638)
杉町 圭史 九州大学, 大学病院, 講師 (90452763)
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研究期間 (年度) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝子多型 / 環境側因子 / エキソーム / 変異率 / EBウイルス |
研究概要 |
難治性で知られる食道癌の治療成績向上のためには食道癌の発生、進展および治療感受性に関わる因子を明らかにする必要がある。われわれは、その3つの因子(多型(P),腫瘍発現解析(T)、環境側因子(E))を総合的かつ俯瞰的に明らかにすることを目的として鋭意研究を進めてきた。当初の予定ではPについては多型の詳細なサブグループ解析、Tは超高密度ゲノムタイリングアレイをプラットフォームとして腫瘍側因子を明らかにすることを述べたが、次世代シークエンサーの進化およびスパコンによる統合解析という技術革新を受けて、直接発癌因子の解明が可能になったため当初計画を改善した。すなわち、現在、食道がん70例の癌部・非癌部を用いて、エキソームシークエンス、発現アレイ、aCGH、SNP アレイを実施した。現在、鋭意統合解析中であるが、本報告では解析途上の21例での報告を行う。 既に食道扁平上皮癌の発生には喫煙や飲酒といった発癌物質が関与していることを明らかにした(Tanaka et al Gut 2011)。発癌物質の関与が示唆されている癌腫では遺伝子変異率は一般的に高く、例として頭頸部癌では喫煙歴を有する症例の遺伝子変異数は喫煙歴の無い症例に比べて多いことが報告されている(Argawal N et al, Science,333:1154-1157,2011)。これらのことから食道扁平上皮癌でも多くの遺伝子変異が起こっていることが予測された。環境因子による食道癌の包括的ゲノムレベルの解析はGWASあるいはaCGHに限られていたが、このほどエキソームシーケンスを行うことにより、より詳細な解像度でのゲノム変異が可能となった。 今年度は、食道癌エキソームシークエンスのデータを追加して、発現アレイ、SNPアレイ、aCGHの情報との統合解析を行い、得られる結果について、今年度、実験レベルで検証を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
論文化が実現していないが、当初予定の「症例数を単純に増やしてパワーを高める、あるいはサブグループ解析を行う」という計画に比べて、急遽開始した次世代シークエンサーによる解析と従来因子との統合解析では、これまで認められなかった新しい知見が次々と発見されている。現時点ではLMDをおえた70例すべての解析ではないが、解析途上において、食道癌とEBVとの関係。あるいはリスクアリルとEBVの感染により生じる特異的なゲノム変異などを認めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、70例のエキソーム解析を終えた時点での報告を準備している。特に変異がパスウエィ上に共起するような重要な分子については、発現レベルを包括的にしらべ、変異の意義を確認。あるいはもっとも重要な変異についてはSanger Sequenceで確認をしていく。
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