研究概要 |
第二年度に得られたサービス動作の満足度評価の知見を元に、時系的視点から(1)受給者の期待形成のモデル化と(2)受給者の状態に合わせたサービス提供方法の自動変更について取り組んだ。 (1)については、スタンドカフェとハンドバッグのカスタマイゼーションを題材に、変動を伴うサービス提供プロセスをモデル化するとともに、受給者の期待形成を組み込んだ顧客満足度の評価モデルを構築した。さらに、受給者が得る情報とその結果形成される期待との関係を管理手法ごとにモデル化した。これにより,期待形成の違いを反映した顧客満足度の評価シミュレーションを行い,期待の管理方法の違いが顧客満足度に与える効果について検証した。結果,顧客満足度のばらつきを小さくするために期待管理が有効であることが明らかとなった。 (2)については、第三年度で当初の目標に質的な達成を得るに至らなかった。しかし、第二年度の成果を利用して、その重要性を確認することができた。人間のサービス提供者は、受給者が急いでいるのか、それとも、そうではないのかといった顧客要求を即時に判断して、サービスの提供速度などの提供方法を適宜調節可能である。この際、第二年度に示した要素に分解したサービス動作とその要素に対する顧客の意図推定が機能することが分かっている。さらに、必ずしも受給者の状態、状況が明示的に示されることがなくとも,一定のルールに従うことで、ほぼ適切にサービスを提供可能である。このように、サービスの自動化と個別適応の実現のためには、(A)受給者の行動の観測による受給者の内的な状態の把握、(B)状態推定に従うサービスの選択肢、加えて(C)推定困難時の標準対応、が準備されなければならない。しかしながら、サービス受給者のサービスに対する反応行動は多岐を極め、特徴抽出の絞り込みが不十分であるため、(A)の推定精度が十分に高くならなかった。そこで、第三年度としては、これらの枠組みを構築し、第二年度で獲得した受け渡し動作と,いった受給者の行動の時系列的な特徴が明確な事例についてのみ、そこから行動の特徴を抽出、さらには、内的状態を推定する方法を提案した。これにより、人工物によるサービス提供においても、受給者の状態に合わせてサービス提供方法を自動的に変更可能になると期待される。よって、当初の計画より質的に不足するが、計画を完結させることができた。
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