視覚情報には、被写体の顔に代表されるプライバシー・センシティブな情報PSI(Privacy-Sensitive Information)が含まれている。このPSIは、画像・映像情報の流通、共有において、プライバシー侵害の危険性をはらんでいる。本研究の目的は、モバイルカメラを通して得られる視覚情報からPSIを分離し、PSIを保護する画像処理法を確立することである。本年度に実施した研究内容を以下にまとめる。 1) 視覚情報からのPSIの分離抽出と保護画像処理 モバイルカメラにより撮影された映像には、、撮影者によって意図的に撮影された人物被写体、及び偶然写り込むなどによって意図せず撮影された人物が存在する。ここでは、映像中の人物被写体を検出し、それぞれの人物被写体に対して撮影者の動き(カメラモーション)と人物被写体の動きに着目して意図の有無の自動識別法を提案した。さらに、意図せず撮影された人物被写体をPSI領域と捉え、保護画像処理(低解像度化、ブロック化、透明化)を適用することにより、撮影意図を損なわないプライバシー保護処理映像の自動生成法を与えた。意図の有無の識別に対する評価実験の結果、フレームあたりの平均誤検出数1.22、未検出率42%を得た。また、プライバシー保護処理映像の自動生成に対する評価実験では、PSI領域のうち31%が正しく保護された。 2) 自然なPSI保護画像の生成 医療現場での患者映像の共有システムにおけるプライバシー保護画像を検討し、人物像や背景の抽象化、人物の仮想物体化などを組み込み、自然な保護画像生成を実現した。
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