本研究は、RI-MANのような人間と接する介護支援ロボットが、多数のセンサデバイスと優れた駆動機構を駆使することで、現実の生活環境における要介護者の状態を統合的に把握する適応統合認知技術を確立し、人間と協力して介護動作を安全・安心に行う柔軟な行動生成技術を研究開発することを研究目的としている。初年度では本研究の実験環境を構築し、(1)仮想的な介護環境におけるロボットによる環境認知や、(2)介護者の作業観察、および(3)ロボットによる介護動作の動力学シミュレーションが可能となった。 具体的に、(1)ではロボット二台で構成するロボット介護システムを形成し、一台のロボットが作業状況観測を行い、もう一台のロボットはその観測結果に応じて実際の介護動作を行うように、二台のロボットが連携して介護動作を実現するようにしている。ここでのロボットによる介護動作の理念として、要介護者を「動かす」よりも本人の運動能力・意欲を推定しながら人の運動機能を「促す」ようにロボットの作業動作を基本的に設計するようにしている。 また、(2)の項目について筋電の無線計測技術と視覚の注視点の実時間計測技術を利用して、実際介護者が行っている介護動作とその時の視覚情報を計測することで、介護者による作業技能の解析(次年度計画)を可能にしている。 さらに、(3)のロボットによる介護動作の動力学シミュレーションでは、要介護者の身長・体重・関節インピーダンスに応じて介護動作の解析をできるように実現できた。 以上の三項目の成果を統合して、次年度ではロボットによる環境適応型要介護者の運動機能を促す研究へと発展していく計画である。
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