本研究は、RI-MANのような人間と接する介護支援ロボットが、多数のセンサデバイスと優れた駆動機構を駆使することで、現実の生活環境における要介護者の状態を統合的に把握する適応統合認知技術を確立し、人間と協力して介護動作を安全・安心に行う柔軟な行動生成技術を研究開発することを研究目的としている。 本年度は最終年度で、前年度までに行ってきた研究成果をもとに、分散適応センシング技術を開発し、要介護者やロボットの介護作業を協力する介護者の身体姿勢、視覚注意などを計測し、ロボットによる対人介護作業の理念を求めて、要介護者を単純にロボットによって「うこかす:動かす」よりも本人の運動能力、運動意欲を積極的に推定しながら、運動の「うながす:促す」をめざしたロボットの認知行動制御方式を提唱した。そのために身体運動における筋電の無線計測、注視点位置情報の実時間計測に加えて作業中の呼吸や脳活動も同時に計測することで、上述の各種状態推定を行うことが可能となった。また、適応インピーダンス制御方式を考案し、要介護者の身体力学インピーダンスを推定しつつ、ロボットがもっとも少ない作用力で要介護者に対する介護動作を実現することを計算機シミュレーションで検証できた。 以上の研究展開で、三年間の研究目標は基本的に達成でき、介護支援ロボットの基本理念から、要介護者の身体状態をより詳細に計測する技術、そしてロボットの安心安全な制御技術まで、数多くの有用な知見を得ることができ、これからの高齢社会におけるロボットによる介護支援作業を実際に応用するために大変重要となる学術基盤を体系化する方向づけができたと思われる。
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