研究課題
前頭連合野がトップ・ダウン制御信号を生成し、それを後部連合野に送り、そこで行われている情報処理過程を制御していることが明らかになっている。しかし、前頭連合野で生成されるトップ・ダウン制御信号の実態や生成の仕組みは明らかではない。本研究では、働物実験とヒトの脳機能イメージング研究を実施し、前頭連合野のトップ・ダウン制御信号の解明を通して、前頭連合野が行っている遂行機能の仕組みを明らかにすることを目的としている。動物実験では、2頭のサルを使用して実験を行ってきた。サルに12対の視覚刺激を用いた対連合学習課題を行わせ、前頭連合野外側部から記録した単一ニューロン活動を解析している。昨年度に引き続き前頭連合野外側部の単一ニューロン活動記録から、Delay 1期の活動、Match 1期の行動決定時の活動に注目し、その特徴を明らかにすることによりトップ・ダウン信号としての役割を明らかにしようと試みた。その結果、Delay 1期に、多くのニューロンでMatch 1期に向かった活動の漸増が観察され、漸増する活動は複数の刺激対条件で観察される頻度の高いことが明らかになった。下側頭頭ではこのような活動はPair-recall活動と呼ばれ、特定の対となる刺激の想起に関係することが明らかにされているが、同様の活動が前頭連合野でも多くのニューロンで見出されることが明らかになった。また、特定の対刺激呈示条件でDelay 1期に持続的発火をするニューロンも観察され、このようなニューロン活動がトップ・ダウン制御信号として下側頭頭のPair-recall活動の制御に関わっている可能性が示唆された。一方、ヒトの実験協力者に、6対の視覚刺激を用いた対連合学習課題と遅延見本合わせ課題を行わせ、fMRIにより対連合学習課題時に賦活される脳部位を調べた。その結果、前頭連合野の外側部、腹外側部に賦活部位が見出された。
2: おおむね順調に進展している
合計で3頭のサルに12対の視覚刺激を使った対連合学習課題を学習させ、前頭連合野より総計で450余りのニューロン活動を記録した。視覚刺激呈示に関連した活動の特徴は今年度論文として公表することができた。本研究の目的のためには、遅延期間活動の解析が不可欠であるが、漸く解析に必要な十分なサンプル数を得ることができた。今後はこのサンプルをもとに定量的な解析を実施する。
前頭連合野の外側部からの神経活動サンプルは十分に得られている。ヒトの脳機能イメージング研究で、前頭連合野の腹外側部や内側部でも賦活が観察されたことから、サルを用いてこれらの部位での神経活動を記録・解析し、外側部の活動特徴との比較により、外側部の遂行機能に関わる神経機構の特徴をより明確にしたいと考えている。
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http://www.users.iimc.kyoto-u.ac.jp/~z59035