研究概要 |
12対の視覚刺激による対連合学習課題(情報の想起にtop-down制御を必要とする)をサルに行わせ、課題関連ニューロン活動の特徴の解析、および、この課題実行時に側頭葉で観察されているpair-coding activity, pair-recall activityとの比較により、前頭連合野で生成されるtop-down制御信号の特徴の解明を目的に、研究を実施している。3頭のサルの前頭連合野外側部より記録した約400個の単一ニューロン活動を解析した結果、(1) 視覚刺激呈示に対して興奮性応答を示すニューロンの全てで刺激選択性が観察された。(2) 同一視覚刺激が見本刺激、参照刺激、妨害刺激として呈示されるが、応答の強さや応答潜時の違いは見出されなかった。(3) 対刺激に対して選択的に応答する対選択性ニューロンが見出された。(4) 対選択性の強度分布を下側頭葉ニューロンと比較した結果、両者で違いは見出されなかった。(5) 刺激選択性のある遅延期間活動が観察されたが、選択性強度は視覚応答に比べて低い。(6) 前頭連合野においてもpair-recall activityに類似した活動が観察された。(7) 側頭葉とは異なり、対選択性を示す遅延期間活動が多くのニューロンで観察された。(8) 遅延期の時間経過による対選択性の強度変化を調べたところ、遅延期の終了に向けて対選択性強度の増加が観察された。これらの結果から、対選択性を示す視覚応答ニューロンや遅延期間活動ニューロンが前頭連合野におけるtop-down制御信号を生成しているニューロンであり、これらのニューロンの出力により側頭葉で観察される情報想起関連活動 (pair-recall activity)が生成され、側頭葉に貯蔵されている対情報が想起されることがわかった。
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