研究課題
成体脳における長期的なニューロン新生の意義を明らかにするために、Nestin-CreERT2;NSE-DTAマウスを用いることにした。このマウスでは、タモキシフェンを投与すると、神経幹細胞においてCreが活性化されてStopカセットがはずれ、さらにこの細胞がニューロンへの分化を開始すると、NSE遺伝子が活性化されてそこに組み込まれたジフテリア毒素が発現する。すなわち、このマウスでは、タモキシフェン投与後に生まれるニューロンに特異的に細胞死が起こる。生後2ヶ月以上経過したNestin-CreERT2;NSE-DTAマウスにタモキシフェンを投与してニューロン新生を阻害したところ、主嗅球だけでなく、副嗅球においてもニューロン数の減少が見られた。これは主にインターニューロンである顆粒細胞数の減少によるもので、投射ニューロンである僧帽細胞や房飾細胞数には変化は見られなかった。また、主嗅上皮や鋤鼻器にも明らかな変化は無かった。次に、嗅覚依存性と思われる行動に関して、コントロールマウスとの比較を行った。コントロールのオスマウスを飼育しているケージに野生型オスマウスを入れると攻撃行動が見られたが、ニューロン新生を阻害したオスマウスではそのような行動は見られなかった。また、コントロールのオスマウスと野生型メスマウスを交配させたところ1週間以内で約80%が妊娠したが、ニューロン新生を阻害したオスマウスは野生型メスマウスと交配させても妊娠率は低かった。一方、ニューロン新生を阻害したメスマウスと野生型オスマウスを交配させた場合も、妊娠率は低かった。さらに、ニューロン新生を阻害したメスマウスの場合は、出産に至る率が低く、たとえ出産しても飼育行動を示さなかった。以上から、成体脳ニューロン新生は、性行動や母性行動等においてきわめて重要な役割を担うことが明らかになった。
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