研究課題
成体脳における長期的なニューロン新生の意義を明らかにするために、生後2ヶ月以上経過したNesti-CreERT2 ; NSE-DTAマウスにタモキシフェンを投与し、解析を行った。このマウスでは、タモキシフェン投与後に神経幹細胞においてCreが活性化されてStopカセットがはずれ、さらにこの細胞がニューロンへの分化を開始すると、NSE遺伝子が活性化されてそこに組み込まれたジフテリア毒素が発現する。すなわち、タモキシフェン投与後に生まれるニューロンに特異的に細胞死が起こる。このマウスでニューロン新生を阻害したところ、海馬・歯状回および主嗅球や副嗅球のニューロンが減少した。これらのマウスは空間記憶障害を示し、さらに嗅覚依存性と思われる行動にも異常が見られた。特に、ニューロン新生阻害によって、見知らぬオスに対するオスの攻撃行動やメスに対するオスの性行動が障害された。また、メスでは妊娠・出産率の低下、母性行動の障害が起こった。さらに、捕食者の臭いに対する忌避反応も低下した。しかし、匂いの嗅ぎ分けや匂い記憶は、ほぼ正常に保たれていた。以上から、成体脳ニューロン新生は、空間記憶、性行動、母性行動、捕食者に対する忌避反応といったきわめて重要な役割を担うことが明らかになった。新生ニューロンの中でどれがこれらの多様な脳機能に関わるのかを明らかにするため、興奮性ニューロンのみ、抑制性ニューロンのみ、あるいは特定のサブタイプのインターニューロンのみの新生を阻害するマウスの開発に成功した。これらのマウスを使って、今後、どの新生ニューロンがどの脳機能に重要かを解析することが可能になった。
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