研究概要 |
我々は腕の交差に伴う時間順序判断の逆転現象(Yamamoto & Kitazawa, Nate Neurosci,2001a,b)をてがかりとして、2つの信号の時間順序は、信号の空間的な「位置」の情報と「動き」の情報から再構成されるという「動き投影仮説」を提唱した(Kitazawa et al.,2007)。本研究では新たに発見されたサッケード眼球運動直前の時間順序判断の逆転現象(Morrone, Ross & Burr, Nat Neurosci,2005)を実験系に選び、ヒトとサルを使った実験により「動き投影仮説」の検証に取り組む。I. 心理物理実験:最近、Teraoら(Nat Neurosci,2008)は2名の被験者でMorroneの結果が再現しなかったと報告した。Morroneの報告も2名のみの被験者に基づく。我々は10名の被験者を用いて詳細に検討し、8名で有意な逆転が生じることを見出した。少数の被験者では逆転を生じない可能性があるが、基本的にMorroneらの報告を指示する結果が得られた。II. 経頭蓋磁気刺激(TMS)実験:腕交差に伴う右手と左手刺激の時間順序逆転には脳のどの領域が関与しているのだろうか。この点を明らかにするため、時間順序判断課題で活動が生じる側頭頭頂接合部にTMS刺激を一側性に加えて(0.9Hz,7分,110%運動閾値)活動を抑制し、逆転に対する効果を調べた。その結果、刺激と反対側の手を先行して刺激した場合のみ、逆転が回復することが明らかとなった。側頭頭頂接合部が時間順序判断の逆転現象に関与していることが示唆された。
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