研究概要 |
我々は腕の交差に伴う時間順序判断の逆転現象(Yamamoto & Kitazawa, Nate Neurosci, 2001a, b)をてがかりとして、2つの信号の時間順序は、信号の空間的な「位置」の情報と「動き」の情報から再構成されるという「動き投影仮説」を提唱した(Kitazawa et al., 2007)。本研究では新たに発見されたサッケード眼球運動直前の時間順序判断の逆転現象(Morrone, Ross&Burr, Nat Neurosci, 2005)を実験系に選び、ヒトとサルを使った実験により「動き投影仮説」の検証に取り組んでいる。1.心理物理実験:5-12Hzの経頭蓋交流刺激を行い、課題成績と刺激位相の相関を調べる実験を開始した。2.非侵襲脳機能計測実験:サッケードの前後のタイミングで時間順序判断課題を行う際の脳磁図計測を開始した。3.サルのニューロン活動記録実験:1頭のサルのMT野とMST野から動き刺激に対する応答を計測し、サッケードの前後のタイミングで適方向が逆転するかどうかを調べた。刺激には一般的なグレーティング刺激に加え、細分化した領域への運動インパルス刺激を用いた。スパイクで時間を揃えて、スパイクの原因となった運動インパルス刺激を平均加算することで、各細胞の動き刺激の受容野と入力から応答までの潜時を明らかにすることができる(動き逆相関法、motion reverse correlation)。この手法を用いることで、サッケード開始前60-100msの時間帯に適方向が逆転するニューロンがMT野にもMST野にも存在することを見出した。我々の仮説を強く支持する結果である。次年度はサルを1頭増やし、成果をまとめる。
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