研究課題
1.抑制性シナプス形成に重要なタンパク質を発見近年の研究から興奮性シナプスと抑制性シナプスのバランスが正常な脳機能活動に重要で、いくつかの神経疾患ではこのバランスが乱れていると考えられている。我々は培養神経細胞を用いた実験により、LRR膜タンパク質の一つSLITRK3がPTPRDと結合して、抑制性シナプス前部の構造を誘導することを見いだした。また生体内でのSLITRK3の役割を明らかにするために、SLITRK3欠損マウスを作製し、そのシナプスの異常を調べたところ、海馬の錐体細胞で、抑制性シナプスが減少することを確認された。SLITRK3欠損マウスは、時々てんかんの発作に似た異常行動を示し、振幅の大きい異常脳波が観察され、おそらく抑制性シナプスの機能が失われたために起きる神経細胞の過活動が原因であろうと考えられた。SLITRK3を含む抑制性シナプスの形成・維持に関わる分子機構を解明できれば、てんかんや多動症など神経細胞の過活動と関連した神経疾患の病態の理解や改善に役立つと期待できる。2.統合失調症関連遺伝子Lrrtm1欠損マウスで見られた行動異常LRRTM1は、LRP膜タンパク質の一種で、統合失調症の発症に関連することが、イギリスの研究グループから報告されている。我々はLRRTM1欠損マウスを作製し、その行動や薬剤の効果を検討した。その結果、新規環境での適応行動開始の遅延、空間記憶の異常など認知機能の障害が認められた。一部の異常は選択的セロトニン取り込み阻害薬で解消されること、NMDA型グルタミン酸受容体阻害薬に対する反応が野生型と異なることを見出した。一方、電子顕微鏡を用いた解析により、海馬の興奮性シナプスの形態に異常が生じていることを見出した。これらの所見はLRRTM1欠損によって引き起こされたシナプスの機能異常が行動異常の原因となることを示唆する。
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