研究概要 |
ミトコンドリアは古くから細胞内のエネルギー産生、脂質のβ酸化等、生命維持に必須の化合物生産の場として、そして現在では細胞内Ca2+濃度の調節、アポトーシス等、細胞内シグナル伝達の中継所としても注目されている。それ故、ミトコンドリアの機能失調は生体にとって深刻な影響を与えるため、ミトコンドリアに対する品質管理のシステムを生体は保有している。 本研究では、ミトコンドリアの品質管理と疾患との関係を明らかにすることを目的とした。そのため、ミトコンドリアが機能失調に陥った場合に、最も影響を受けると予想される中枢神経系、神経・筋肉系に注目し、その最も顕著でかつ重要な表現型である運動失調に注目し、これらの表現型を呈する既存、並びに新規のモデルマウスを作製する。そのようなモデルを樹立の後、その神経、筋細胞等を用い、ミトコンドリアの挙動をバイオイメージングにより解析することによって、上記目的を達成したい。 今年度は、これまでに作製した、4系統のミトコンドリア局在型蛍光蛋白遺伝子導入(Tg)マウスを用いて、細胞内でのミトコンドリアの融合・分裂・輸送などの動態を詳細に観察し、組織ごとにミトコンドリアの形態に著しい差が存在することを見出した(その一部はShitara et al., Exp.Anim., 59 : 99-104, 2010で公表)。さらに、オートファジーとミトコンドリアとの相互作用を形態学的に解析するための準備を行なった。今後これらのマウスを用いて、ミトコンドリアの品質管理の破綻と疾患の表現型との関係を重点的に解析し、その疾患についての組織病理学的所見とミトコンドリアの機能異常との関係を詳細に検討する。
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