研究概要 |
本研究は、多波長で同時計測された光電容積脈波 (photoplethysmogram: PPG) を用い、これまでの基礎研究で提案・検証された光学的血糖値計測法(pulse glucometry)を発展させ、実用に向けた各種血中成分の非侵襲計測法(pulse spectro-hemometryと命名)の確立を最終目標とした。 そのため、①; PPG発生機序を説明するモデル解析と光学セルを用いた血中成分吸光特性のin vitro試験、②;近赤外領域レーザーもしくはLEDを光源としたPPG計測システムの試作開発と、市場での実用的要請が高いグルコース(BGL)とアルコール(BAL)に絞ってin vivo試験を行い、③;実用化を踏まえて、数波長で計測を行う新手法を提案し、実用システム開発の礎を確立する。 本年度は、上記②と③について、理論的・実験的検討を進めた。先ず、LED光源を用い、上記吸収帯を含むBAL計測用3波長およびBGL計測用4波長を有するPPG計測システムを構築し、アルコールおよび糖負荷試験を実施して、BALとBGLの予測精度を検討した。次に、組織内光散乱を考慮した修正ランベルト・ベール則に基づく計測理論を考案(BAL計測;modified pulse alcometry、BGL計測;modified pulse glucometryと命名)し、近接波長セットをそれぞれ(1125, 1155, 1185, 1215 nm)および(1570, 1600, 1630, 1690, 1720 nm)として,上記と同様な実験を行った。その結果、修正理論に基づく計測法の方が予測精度の向上が認められ,更なる精度向上にはPPGの高感度・高S/N計測が不可欠であり,現在レーザー光と積分球式光検出法を導入した小型システム開発と予備実験を実施中で,実用化への見通しを得ることができた。
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