研究概要 |
低酸素に関連する疾患として、血流の停止によって起こる虚血性疾患が代表的なものであるが、実は腫瘍内にも低酸素領域が存在する。臨床研究では、低酸素領域の多い腫瘍は、治療に耐性を示し、悪性度が高い傾向が大きいことが報告されている。つまり、低酸素は、日本の三大死因である「脳血管障害、心疾患、がん」の重要なシグナルであり,これをいち早く捉え、評価することは,早期診断,早期治療という観点からいっても非常に重要である。低酸素が上記疾患に結び付き、重要なパロメーターである事は、以前から認識されているものの、生体内の組織における至適酸素濃度が組織細胞ごとに異なるために、各組織細胞の至適酸素濃度をある程度下回った「病的低酸素」を感度良く検出する方法が求められる。本研究は、「病的低酸素」に応答して起こる生理的変化を分子レベルで捉えるバイオイメージングプローブを開発し、ひとつのブローブで上記三大疾患を同時にイメージングできる診断薬の創出を目的としている。当初の計画通り、前年度までに近赤外蛍光色素を用いて標識された光イメージングプローブを用いて、細胞の酸素センサーにより制御される機能ドメインの最適化が終了している。この融合タンパク質POHを放射性同位元素で標識することで、PETおよびSPECTプローブを作成しているところであるが、本年度は、POHを放射性同位元素で標識する方法の検討を行った。具体的には、POHのPETプローブ化の一環として、放射性ヨウ素を用いた効率的標識合成の検討を行った。ラジオHPLCによる反応追跡の結果、ヨウ素125標識Halo Tagリガンド合成が可能であることが示唆された。また、SPECTブローブ化のために、DOTA誘導体をPOHに導入するためのリガンド(HL)と結合させたHL-DOTAを合成し^<111>Inで標識した。いずれも最適化が必要であるものの、POHのPETおよびSPECTプローブ化のための準備がほぼ完成した。
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