第二年度以降は初年度に得られた知見を基にRNPの生理活性、薬物キャリア、イメージング剤および細胞操作を目的としてアプローチを進めた。これらの具体的成果を列記する。 1.RNPの設計と血中滞留性の評価:pHに応答して壊れる、体積相転移するRNPに対して、血中滞留性とともに体内動態の検討を行った。血中半減期はpH応答型のRNPおよび非応答型RNPでそれぞれ15分、4時間であった。 2.RIラベル化:生体活性とともに動態を高感度で精度良く見積もるために、^<125>Iを用いてRIラベル化を行い、上述の血中滞留性とともに臓器分布評価を行った。 3.ナノ治療:これらの基礎的知見をふまえ、酸化ストレス傷害に対するナノ粒子治療システムの検討を行った。特にアルツハイマーモデルのAβアミロイド障害神経-細胞実験において酸化ストレスに対するミトコンドリア・アポトーシスへのRNPの影響を検討を、DNA傷害および過酸化脂質傷害に対するRNPの効果を評価し、定量的な知見を得た。さらに酸化ストレスによる疾患が強く懸念される腎臓の虚血再灌流などのモデル疾患に対する細胞および動物評価を行い、好成績を得た。 4.薬物送達システム:胡椒から抽出されるファイトケミカルのピペリンを利用し、RNPへの可溶化および治療効果をin vitroで検証した。ピペリン含有RNPはその抗酸化特性が著しく向上した。これはRNPがスーパーオキシド及びヒドロキシラジカルを消去するのに対し、ピペンリンがカタラーゼ活性を向上させるため、相乗効果を発揮することが見いだされた。 5.バイオイメージング:このようなpH応答性粒子にTEMPOを導入することにより、T2緩和能の変化一を創り込むことが可能となった。これは、腫瘍や炎症部位に応答してイメージングが期待される。
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